パートで働く主婦(主夫)は休業損害を請求できるのか弁護士が解説
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鹿児島県警察が公表している交通事故発生状況の統計資料によると、令和4年に鹿児島県内で発生した交通事故の件数は、3088件で、前年よりも444件減少しています。
交通事故の被害者が会社員であった場合、怪我の治療のために仕事を休むと給料の減少という損害が生じます。このような減収分は、「休業損害」として、加害者側に請求することができます。
では、被害者がパートで働く主婦(主夫)であった場合には、休業損害を請求することができるのでしょうか。兼業主婦特有の問題点などもありますので、しっかりと理解しておくことが大切です。今回は、パートで働く主婦(主夫)の休業損害について、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
1、休業損害とは
休業損害とは、交通事故による怪我が原因で休業し、または十分に就労できなかったために、傷害の治癒または症状固定に至るまでの間に、本来得られたはずの収入や利益を得られなかったことによる損害です。
なお、症状固定とは、治療を続けても、それ以上の症状の改善を望めない状態のことをいいます。
交通事故で怪我をすると、怪我の治療のために、仕事を休んだり、遅刻・早退したりしなければならないことがあります。すると、その時間分の給料が引かれてしまうため、毎月の給料が減少してしまいます。
これは、交通事故がなければ発生しなかった損害といえますので、交通事故の被害者は、加害者側に対して、休業損害として給料の減収分の損害を請求することができます。
2、兼業主婦(主夫)の休業損害はどうなるのか
交通事故の被害者が兼業主婦であった場合、休業損害はどうなるのでしょうか。
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(1)兼業主婦でも休業損害の請求は可能
兼業主婦(主夫)とは、家事労働をしながら仕事もしている人のことをいいます。
兼業主婦には、主婦と労働者という2つの性質がありますので、休業損害を考える際には両者を考慮する必要があります。すなわち、主婦という面では、現実的に収入を得ているわけではありませんが、家事労働を外部の第三者に依頼した場合には、当然費用が発生します。
そのため、家事労働には経済的価値があると評価することができます。主婦が事故の怪我によって、家事労働ができなくなれば休業による損害が生じることになります。
また、主婦がパートで働いている場合には、怪我の治療などのために、パートを休めば、パート収入の減少という損害が生じます。
このように、兼業主婦であっても、休業による損害は発生しますので、休業損害を請求することは可能です。なお、兼業主婦の休業損害に関する考え方は、兼業主夫にも同様にあてはまります。 -
(2)兼業主婦の休業損害の計算方法
兼業主婦の休業損害は、
1日あたりの基礎収入×休業日数
という計算式によって計算をします。
計算式に含まれる各要素の詳細は、以下のとおりです。
① 1日あたりの基礎収入
兼業主婦には、家事労働部分と就業部分の2つがありますので、それぞれの基礎収入を比較して、どちらか高い方が兼業主婦の基礎収入になります。
兼業主婦の家事労働部分については、現実に収入を得ているわけではありませんが、経済的価値を有するものと評価できます。
そこで、賃金センサス(厚生労働省:賃金構造基本統計調査)の女性労働者の全年齢平均賃金に基づいて計算をするのが一般的です。
令和4年の賃金センサスによると、女性労働者の全年齢平均賃金は394万3500円です。
そのため、1日あたりの基礎収入は以下の通り算出されます。394万3500円÷365日=1万804円
また、兼業主婦の就業部分については、現実の収入をベースにして計算を行います。一般的には、事故前3か月分の給料を90日で割ることで、1日あたりの基礎収入を算出します。たとえば、毎月10万円のパート収入がある主婦の場合には、「30万円÷90日」という計算により、1日あたりの基礎収入は3333円となります。
上記のケースでは、家事労働部分の基礎収入が就業部分の基礎収入を上回りますので、家事労働部分の基礎収入が休業損害を計算する際の基礎収入になります。
② 休業日数
兼業主婦の休業日数も、家事労働部分と就業部分に分けて考える必要があります。
就業部分については、治癒または症状固定までの期間において、事故による怪我が原因で休業を余儀なくされたものと認められる範囲(事故と相当因果関係のある休業の期間)が休業期間となります。勤務先から「休業損害証明書」を取得すれば、治療のために休んだ日数、遅刻した日数、早退した日数、有給休暇を利用した日数などを証明することができます。
これに対して、家事労働部分については、家事労働ができなかった日数が基準になりますが、就業部分とは異なり、客観的に立証することが難しいものとなります。
そこで、家事労働部分については、以下のような考え方で休業日数を算定します。- ① 実入通院日数を休業日数にする方法
- ② 治療期間すべてを休業日数として、休業割合を考慮する方法
②の方法は、事故の影響により、毎日の家事労働に何らかの支障が生じているものの、治療の経過とともに支障の程度は徐々に軽くなっていくという考え方です。
たとえば、治療期間が120日で、徐々に痛みやしびれが改善してきているという場合には、事故直後の40日間が100%、41日から80日が50%、81日から120日が30%という割合で請求をします。
賃金センサスに基づき1日あたりの基礎収入を1万804円とすると、以下のような計算になります。1万804円×40日×100%(43万2160円)+
1万804円×40日×50%(21万6080円)+
1万804円×40日×30%(12万9648円)
=77万7888円
なお、このような休業割合を用いる方法だと、家事労働にどの程度の支障が生じていたのかを具体的に主張立証していく必要があります。
病院のカルテなどに、「痛みのレベルは○割程度まで改善」などの記載があれば、それを根拠に主張していくことができますし、日記やメモなどで具体的な主張を記載しておけばそれも根拠になります。
3、家事労働部分、就業部分どちらも請求できる?
兼業主婦(主夫)には、家事労働部分と就業部分の2つの損害が生じることから、休業損害を請求する際には、両者を合算した金額で請求したいと考える方もいるかもしれません。
しかし、実務上は、家事労働部分と就業部分のいずれか一方の請求しか認められないことが多いです。家事労働部分と就業部分を比較して、家事労働部分の方が多ければ家事労働部分の休業損害のみを請求し、就業部分が多ければ就業部分の休業損害を請求するのが一般的です。
パート収入のみの兼業主婦の場合には、家事労働部分の基礎収入の方が多くなることが多いため、家事労働への具体的な支障を主張立証するなどして休業損害を請求してくことになります。
ただし、保険会社との示談交渉や裁判での主張立証によっては、全額ではありませんが家事労働部分と就業部分の両方が休業損害として考慮されるケースもあります。
そのため、どちらか一方のみの休業損害では納得できないという場合には、一度、弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。
4、休業損害でのお悩みは弁護士に相談を
休業損害でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)兼業主婦の休業損害の考え方についてアドバイスがもらえる
一般的な会社員であれば、「給料の減少=休業損害」となりますので、休業損害の考え方はそこまで複雑ではありません。
しかし、兼業主婦の場合には、家事労働部分と就業部分の2つの側面がありますので、それらをきちんと評価しなければ適切な休業損害の金額を算出することはできません。
兼業主婦であっても休業損害を請求することは可能ですので、保険会社から提示された休業損害の金額に納得できないという場合には、まずは、弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。 -
(2)保険会社との交渉を任せることができる
保険会社から提示された休業損害の金額に納得できないという場合には、保険会社との交渉によって、休業損害の増額を求めていくことになります。
しかし、保険会社の担当者は、普段から多くの交通事故事案を扱っていますので、交通事故の被害者との間には、情報量や交渉力に圧倒的な格差があります。被害者が休業損害の増額を求めたとしても、さまざまな理屈をつけて増額を拒んでくる可能性が高いでしょう。
保険会社との示談交渉でお困りの方は、弁護士にお任せください。弁護士であれば、被害者に代わって保険会社と交渉をすることができますので、具体的な根拠に基づいて、休業損害の金額や計算方法を説明することが可能です。それによって示談交渉による休業損害の増額も期待できるでしょう。 -
(3)慰謝料の増額が期待できる
交通事故によって怪我をした場合には、休業損害だけでなく慰謝料も請求することができます。
交通事故の慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準という3種類の基準があり、どの基準を使うかによって慰謝料の金額が大きく変わってきます。
最も高額になる算定基準は、弁護士基準ですが、弁護士基準を使って示談交渉をするためには、弁護士への依頼が不可欠となります。弁護士に依頼をすれば、弁護士基準によって計算をした慰謝料を請求することができますので、慰謝料の増額を希望される方は、弁護士にご依頼ください。
5、まとめ
パートで働く兼業主婦の方は、交通事故の怪我によって家事労働部分と就業部分という2つの側面で休業損害が発生します。
たとえ怪我の痛みを我慢してパートをしていたため就業部分では休業損害が発生していないようなケースでも、家事労働部分で休業損害を請求できる可能性があります。
兼業主婦の休業損害の請求にあたっては、自動車事故の解決実績がある弁護士のサポートが重要です。まずは、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお気軽にご相談ください。
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