交通事故の当事者同士で連絡するのはNG? 適切な慰謝料をもらう方法
- その他
- 事故
- 当事者同士
- 連絡
鹿児島県警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和6年に鹿児島県内で発生した交通事故件数は2871件でした。
交通事故の被害に遭った場合、基本的には保険会社を通じて加害者とやり取りをするため、当事者同士で連絡することはほとんどありません。ただし、加害者が保険に加入していないなどの例外的なケースでは、当事者同士で連絡を取らなければならないこともあります。
今回は、交通事故の当事者同士で連絡することの是非と適切な慰謝料をもらう方法などについて、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故の被害後、慰謝料が払われるまでの流れ
交通事故の被害に遭った後から賠償金が支払われるまでの流れは、一般的に以下のようになります。
-
(1)事故発生
交通事故の被害に遭ったときは、速やかに安全な場所に移動して、ご自身や同乗者に怪我がないかを確認します。怪我人がいる場合には、救急車を呼ぶようにしましょう。
また、事故の当事者には警察への届出が義務付けられているため、軽微な事故であったとしても必ず警察に連絡してください。
警察への連絡を怠ると交通事故証明書が取得できず、怪我で通院をしても治療費や慰謝料などの支払いが受けられない可能性もあるため注意が必要です。 -
(2)加害者と連絡先などの交換
以下のような情報は今後の交通事故対応に必要となるため、加害者に確認しておきましょう。
- 加害者の住所、氏名、電話番号、メールアドレスなどの連絡先
- 加害者が加入する自賠責保険や任意保険に関する情報(保険会社名、保険証書番号など)
また、今後の手続きで過失割合が争点になる可能性もあるため、可能であれば事故現場や事故車両の状況などを写真や動画に残しておくとよいでしょう。
-
(3)病院での治療
交通事故に遭った場合は、できるだけ早く病院を受診することが重要です。事故当日は痛みがなかったとしても、後から症状が現れるケースは珍しくありません。自己判断で治療の要否を決めるのではなく、必ず病院を受診するようにしてください。
また、加害者が任意保険に加入している場合、保険会社の担当者から連絡が入り、今後の治療の進め方や必要な手続きについて説明があります。病院への治療費の支払いについても、基本的には、加害者側の保険会社が対応してくれます。 -
(4)治癒・症状固定
被害者は、医師から治癒または症状固定と診断されるまで、病院への通院を続ける必要があります。症状固定とは、治療を続けてもそれ以上の症状の改善が望めない状態のことをいいます。
この期間中に自己判断で通院をやめてしまうと、適正な慰謝料の支払いを受けられなくなったり、後遺障害の認定が困難になったりするおそれがあります。そのため、医師の指示にしたがって継続的かつ定期的に通院をすることが重要です。
なお、通院期間が長くなると保険会社から「治療費の打ち切り」の打診をされることがあります。
しかし、治療の終了時期(治癒または症状固定時期)は、保険会社の判断ではなく、医師の判断が重要になります。保険会社の提案に流されることなく、医師の医学的な判断を踏まえて今後の対応を決めるようにしましょう。 -
(5)示談交渉
医師から「治癒」または「症状固定」と診断され治療が終了した時点、または治療終了後に後遺障害等級認定の手続きが終了した時点で示談交渉が始まります。後遺障害等級認定の手続きについては、後で詳しく述べます。
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社から示談金の額が記載された書面(いわゆる「示談提示書」)が送付されます。その書面をもとに、保険会社との示談交渉を進めることになります。
しかし、注意が必要なのは、保険会社が提示する示談金額は、裁判所が認定する賠償額に比べて低い金額であることが多いという点です。
このため、提示された金額をそのまま受け入れてしまうと、本来得られるべき賠償額に満たないまま示談が成立してしまうおそれがあります。
特に、重度の怪我や後遺障害が残るような重大事故の場合は、賠償額も高額になる傾向があるため、示談交渉がより重要になってきます。
適正な賠償金の支払いを受けるためにも、示談交渉は弁護士のサポートを受けて進めることをおすすめします。 -
(6)示談成立または訴訟提起
保険会社との示談交渉の結果、被害者が示談金額に納得できる場合は、示談書や免責証書に必要事項を記入し、署名・押印を行うことで示談が成立します。これにより、損害賠償に関するトラブルは解決し、基本的に以後の請求はできなくなります。
保険会社との交渉が決裂した場合は、訴訟を提起して、裁判所に適正な賠償額を判断してもらうことが可能です。訴訟には時間と費用がかかりますが、法的に納得のいく解決を得るための有力な手段となります。 -
(7)賠償金の支払い
示談成立または裁判所の判決が確定すれば、保険会社から賠償金が支払われます。
支払いの時期や方法は、示談書または判決に基づいて定められており、通常は一定の期間内に一括での支払いがなされるのが一般的です。
2、当事者同士で連絡を取るべきか
交通事故の被害に遭ったとき、当事者同士で連絡を取るべきか迷う方も少なくありません。しかし、以下のような理由から、事故の当事者同士が直接連絡を取ることは避けるべきです。
-
(1)保険会社への連絡だけで十分
加害者が任意保険に加入している場合、事故後の手続きや賠償金の支払いは、加害者の保険会社の担当者とのやり取りだけで完結します。
そのため、被害者が加害者本人と連絡を取り合う必要は一切なく、連絡を取らなくても問題なく手続きは進みます。 -
(2)当事者同士で金銭のやり取りがあると示談に影響を及ぼす可能性がある
当事者同士で直接金銭のやり取りをしてしまうと、示談交渉に支障が出るおそれがあります。
特に、示談書などの書面を交わしてしまうと、その内容によっては、本来得られたはずの賠償金の支払いが一切受けられない可能性もあるため注意が必要です。 -
(3)相手の対応にストレスを感じる
事故後、加害者が誠実に対応してくれるとは限りません。
当事者同士で連絡をして不誠実な対応をされると、かえって被害者の精神的負担が大きくなってしまうこともあります。
相手に何かを期待することが、かえってストレスの原因になることもあるため、当事者同士の連絡は避けた方がよいでしょう。 -
(4)感情的になりトラブルの原因となる
加害者の対応に納得がいかないと、つい感情的になって謝罪などを求めて何度も連絡を取ってしまうケースがあります。しかし、繰り返しの連絡や強い言動が、逆に「脅迫」や「恐喝」と受け取られてしまい、法的トラブルに発展する可能性もあります。
本来、被害者であるはずの立場が、不用意な言動によって危うくなるリスクもあるため、直接の連絡は避けるべきです。
お問い合わせください。
3、当事者同士で連絡しなければならないケースはある?
当事者同士の連絡は避けるべきですが、例外的に以下のようなケースでは当事者同士の連絡が必要になります。
-
(1)加害者が任意保険に加入していないケース
加害者が任意保険に加入していない場合、当然ながら保険会社が間に入ってくれることはありません。このため、被害者は加害者本人と直接連絡を取り、損害賠償の交渉を行う必要があります。
ただし、任意保険未加入者は経済的に困窮している場合も多く、実際に賠償金を支払ってもらえる保証がないケースも珍しくありません。
こうした場合には、自賠責保険の請求手続きや、被害者自身の保険(人身傷害保険など)を利用する方法も検討する必要があります。 -
(2)加害者が任意保険を利用しないケース
加害者が任意保険に加入している場合であっても、任意保険を利用するには加害者本人の同意が必要になります。加害者が任意保険の利用に同意しない場合は、加害者の保険会社が対応することはできないため、当事者同士で連絡をしなければなりません。
ただし、このようなケースでは、示談書の作成や支払い条件の設定など、法律的な配慮が必要となるため、弁護士への相談をおすすめします。
個人同士の話し合いだけで解決を図ろうとすると、後々トラブルに発展する可能性が高くなります。
4、事故対応は弁護士に任せるべき理由3つ
交通事故に遭った場合、保険会社との交渉や慰謝料の算定、後遺障害の等級認定など、専門的な知識が求められる場面が多く存在します。
そのため、以下のような理由から事故対応は弁護士に任せるのがおすすめです。
-
(1)面倒な保険会社とのやり取りを任せられる
交通事故の賠償金の支払いを受けるためには、怪我の治療と並行して被害者自身で保険会社との交渉を進めていかなければなりません。しかし、交通事故や保険の知識が乏しい被害者自身では、保険会社とのやり取りにストレスを感じることもあるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、保険会社とのやり取りをすべて任せることができるため、被害者自身の負担やストレスを大幅に軽減し、治療に専念することができます。 -
(2)慰謝料の増額が期待できる
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
保険会社から提示される慰謝料は、一般的に任意保険基準に基づいて算定された低額なものです。
これに対し、弁護士は裁判所基準を用いて慰謝料を請求できるため、保険会社が提示する慰謝料額から大幅に増額できる可能性があります。
実際に、保険会社の提示額が裁判所基準の半分以下であったというケースも少なくありません。 -
(3)適正な後遺障害認定を受けられる
事故による後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定申請を行うことで、賠償金の増額につながる可能性があります。
しかし、この手続きは、主に書面審査で行われるため、診断書の記載内容や検査結果などの資料の精度が極めて重要です。
弁護士であれば、後遺障害ごとの認定基準を熟知しているため、治療段階から適切な等級認定を受けられるようサポートすることができます。
これにより、本来得られるべき等級認定を逃すリスクを大きく減らすことができます。
5、まとめ
加害者が任意保険に加入している場合、事故後のやり取りは保険会社の担当者との間で進めるため、当事者同士で連絡をする必要はありません。当事者同士で連絡をすると、かえってトラブルの原因にもなるため避けた方がよいでしょう。
もっとも、保険会社の担当者との間でやり取りをすることも被害者にとっては大きな負担となるため、その対応は弁護士に任せるのがおすすめです。
交通事故の被害に遭ってお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|
