独身者の法定相続人は誰になる? 遺産相続で知っておきたい基礎知識

2023年10月24日
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独身者の法定相続人は誰になる? 遺産相続で知っておきたい基礎知識

国勢調査結果によると、鹿児島県の令和2年におけるひとり世帯は28万2664です。一般世帯の38.9%を占めており、平成27年から2万5071世帯上昇しています。65歳以上のひとり暮らし高齢者は11万9020世帯となり、平成27年の結果から増加しています。

ひとり世帯の増加が示しているとおり、独身のまま生涯を終えるつもりである方もいるでしょう。その場合、遺産の相続が誰になるか気になる方も多いはずです。

そこで今回は、独身者の法定相続人や遺産相続に関する基礎知識について、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

1、独身者の法定相続人と相続順位

法定相続人とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利がある人のことです。民法によって誰が財産を相続するのか、また財産の分け方(法定相続分)などが定められています。亡くなった方の遺言書がない場合は、相続人同士の話し合いによって財産の分け方が決められます。

  1. (1)法定相続人の相続順位

    法定相続人の相続順位は、民法によって以下のとおりに決められています

    • 亡くなった方の配偶者は常に相続人となる
    • 第1順位:亡くなった方の子ども(直系卑属)
    • 第2順位:亡くなった方の父母、祖父母(直系尊属)
    • 第3順位:亡くなった方の兄弟姉妹


    まず、亡くなった方の配偶者は必ず法定相続人になります。なお、配偶者とは法律上の婚姻関係を結んでいなければなりません。事実婚や内縁関係であった場合や離婚している元配偶者は対象外です。

    そして、相続順位は上の順位の方が優先されます。第1順位に該当する方がひとりでもいる場合は、第2順位の方は法定相続人に該当しません。たとえば、被相続人に配偶者と子ども、父母(子どもにとっての祖父母)がいた場合は、配偶者と子どもが法定相続人に該当します。子どもが亡くなっている場合は、その子どもの子どもや孫が法定相続人です(代襲相続)。

  2. (2)独身者に子どもがいた場合

    独身者に子どもがいる場合は、以下のケースなどが該当します。

    • 亡くなった元配偶者との子ども
    • 離婚した元配偶者との子ども
    • 養子縁組の子ども


    なお、血のつながりがある子どもである実子と、養子縁組の子どもとの法定相続分に差はありません。独身者に子どもがいた場合に、その独身者が亡くなると、上記の相続順位に従って第1順位の子どもが法定相続人となります。ただし、子どもが未成年の場合は、法定代理人が相続人として承継します。

  3. (3)独身者に子どもがいない場合

    独身者に子どもがいない場合、亡くなった独身者の両親が生存している場合は、両親が法定相続人となります。両親のどちらかが亡くなっている際には、生きている父母の一方が法定相続人に該当します。

  4. (4)父母が亡くなっている場合

    父母が両方とも亡くなっている場合は、祖父母が法定相続人です。この場合も、どちらかが亡くなっている際には、生きている祖父母のどちらが法定相続人となります。しかし、祖父母のどちらも亡くなっている場合は、亡くなった独身者の兄弟姉妹が法定相続人の対象です。

2、独身者の相続における注意点

次に、独身者の相続における注意点を解説します。

  1. (1)代襲相続が適用される場合もある

    代襲相続とは、相続人となる方が法定相続人の対象となる以前に亡くなっている場合に、その相続人の子どもなどが代わりに相続する制度のことです。たとえば、相続順位の第3順位である亡くなった独身者の兄弟姉妹も亡くなっている場合は、その子ども(独身者の甥、または姪)が法定相続人の対象となり、この相続を代襲相続といいます。

    なお、当該の相続人が遺言書を偽造したり、亡くなった独身者に対して虐待などをしたりして、相続権を失っていた場合は、その相続人の子孫に代襲相続が適用されます。
    ただし、相続人が相続放棄した場合には、代襲相続は起きません。相続放棄をした場合は、相続権そのものが生じていないことになります。そのため、相続権を引き継ぐ代襲相続は発生しないのです。

    さらに、代襲相続は、独身者の子どもである直系卑属であれば、その子どもの子どもまで続くことを理解しておきましょう。たとえば、亡くなった独身者の子ども・孫もすでに亡くなっている場合は、ひ孫が法定相続人の対象です。もし、ひ孫も亡くなっている場合は、玄孫が法定相続人となります。

    なお、直系卑属には代襲相続に代数の限定はありませんが、兄弟姉妹の子孫の場合は一代のみ(被相続人にとっての甥・姪)代襲相続することが可能です

  2. (2)嫡出子と非嫡出子の法定相続分には差がない

    独身者が亡くなった場合、独身者と過去に婚姻関係を結んだ夫・妻との子どもである嫡出子と、独身者と内縁の妻または夫との子どもである非嫡出子がそれぞれ法定相続人になったとしても、法定相続分には差はありません。さらに、養子縁組した子どもとの差もないことを理解しておきましょう。

    なお、独身者が父親であった場合、非嫡出子との間に親子関係を生じさせるためには、認知の手続きをしている必要があります。認知を受けていない非嫡出子は、法律上の親子関係が認められていないため、このままだと相続権を得ることができません。

    認知されていない非嫡出子の場合は、非嫡出子が死後認知の訴えを起こして親子関係を証明する、独身者が遺言書に非嫡出子の相続分を記しておく、などの方法で相続をすることが可能です。

  3. (3)遺言書の作成を検討する

    独身者であっても、遺言書を作成することは重要です。遺言書には法的効力があり、自分の財産を誰にどのように分けるかを明確にできます。さらに、遺言書がある場合、相続に関する手続きがスムーズに進むため、家族や友人への負担を減らせるでしょう。

    遺言書には、手書きのものでも有効ですが、法的に問題のない内容で作成できるよう弁護士に依頼することをおすすめします。遺言書を作成する際には、以下の点に注意することが大切です。

    • 相続人を正確に記載する
    • 相続財産とそれぞれに対する遺贈内容を明確にする
    • 遺留分を考慮した内容とする
    • 遺言執行者を指定し、遺言書の遵守を監督してもらう


    また、遺言書を作成する際には、家族や友人に相談することも重要です。自分の考えを伝え、理解を得ることで、家族間でのトラブルを未然に防げます。また、遺言書は、一度作成したら定期的に見直し、変更が必要な場合は適宜修正するようにしましょう。

3、法定相続人になる対象者が誰もいないケースの遺産相続

これまでは、誰かしら法定相続人がいるケースをご紹介してきました。

それでは、法定相続人になる対象が誰もいない場合はどうなるのでしょうか。

  1. (1)特別縁故者への財産分与

    特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者をいいます。例えば、内縁の配偶者や同居の叔父叔母など、亡くなった方と親密な関係があった方たちのことです。ただし、特別縁故者には相続権があるわけではありません。特別縁故者に相続させるためには、法定相続人がいないことが前提条件となります。

    また、特別縁故者が遺産を受け取りたい場合は、家庭裁判所へ申し立てをしなくてはなりません。遺産を受け取るまでには、以下のような流れで進んでいきます。

    • 相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を申し立てる
    • 相続人調査が行われる
    • 債務の支払いなどが実施される
    • 相続人の不存在が確定する
    • 確定後3か月以内に特別縁故者への相続財産分与の申し立てを行う


    相続財産清算人(相続財産管理人)とは
    相続財産清算人(相続財産管理人)とは、法定相続人がいない相続財産を管理し、最終的には国庫へ帰属させるよう職務を行う人をいいます。相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を申し立てるためには、以下の条件を満たしていなくてはなりません

    • 申立人が利害関係者であること
    • 相続財産があること
    • 相続人の有無が不明であること


  2. (2)国庫に帰属となる

    法定相続人や特別縁故者などに誰も該当しない場合は、相続財産管理人が財産を清算し、残った金銭や不動産は国庫に納められます。

  3. (3)遺贈

    遺贈とは、遺言書によって財産を指定した他人や団体に無償で与えることを指します。相続人でない方に相続財産を与えるには、遺贈(遺言)によるしかありません

4、まとめ

この記事では、独身者の法定相続人や相続順位、注意点、法定相続人になる対象者が誰もいないケースの遺産相続について解説しました。

独身者が亡くなった場合、子どもがいる、またはいない場合によって法定相続人が異なります。さらに、法定相続人が誰もいないケースに該当する可能性もあります。その場合は、特別縁故者に財産分与するなども選択肢のひとつでしょう。

また、法定相続人の有無にかかわらず、あらかじめ遺言書を作成しておくことで、残された家族や友人がスムーズに遺産相続を進めることができます。その際、遺言書は公正証書遺言での作成がおすすめです。

独身者の相続人はどうなるのか、遺言書を作成したいがアドバイスがほしいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています