仲が悪い兄弟と遺産相続で揉めたら? さまざまなケースの対処法を解説
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2020年の鹿児島市の出生者数は4800人、死亡者数は5994人でした。
全国で進む少子高齢化とともに、相続について悩む方も増加する傾向にあります。中でも、兄弟の仲が悪いと親が亡くなって相続が発生した際に、深刻なトラブルに発展するリスクがあります。できる限り円満・早期に相続トラブルを解決するには、弁護士を頼るものひとつの手段です。
今回は、兄弟仲が悪い場合に発生しがちな相続トラブルやその対処法、兄弟に黙って遺産分割をしてしまうことのリスクなどを、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和3年度鹿児島市統計書」(鹿児島市)
1、兄弟仲が悪い場合に発生しがちな相続トラブル例
兄弟同士である相続人の仲が悪いと、さまざまな相続トラブルが発生するリスクがあります。兄弟仲が悪い場合に発生しがちな相続トラブルの例は、以下のとおりです。
- 遺産分割について意見が対立する
- 兄弟同士で連絡が取れない
- 遺言書の内容が偏っている
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(1)遺産分割について意見が対立する
遺産分割協議をまとめるには、相続人同士が互いに妥協・譲歩することが必要になります。
しかし、兄弟同士である相続人の仲が悪い場合、遺産分割の際にもお互いに譲歩せず、徹底的に自分の主張を通そうとするケースが多いです。この場合、遺産分割に関する紛争が長期化する可能性が高いでしょう。 -
(2)兄弟同士で連絡が取れない
仲が悪い兄弟同士は、互いに会話やメッセージのやり取りをすることも嫌であるため、連絡が途切れ途切れになりがちです。
遺産分割協議を成立させるには、相続人同士が緊密に連絡をとって話し合いを進めなければなりません。しかし、相続人間の連絡が困難な状況では、遺産分割協議がなかなか進展せず、相続手続きの完了までに時間がかかってしまうことが多いです。 -
(3)遺言書の内容が偏っている
兄弟仲が悪くなる原因のひとつとして、実家と親しくしている人と実家に寄り付かなくなった人が疎遠になってしまうことが挙げられます。
このようなケースにおいて、被相続人が遺言書を作成した場合、実家と親しくしている相続人が優遇されるケースが多いです。
遺言書の内容が偏ったものになった結果、遺産をほとんど取得できなかった相続人から不満が噴出し、遺言無効や遺留分侵害額請求などのトラブルに発展することがあります。
2、兄弟間における相続トラブルへの対処法
仲が悪い兄弟同士の相続トラブルは、弁護士のサポートを受けながら早期解決を図りましょう。以下の3つの場合について、兄弟同士の相続トラブルへの対処法を紹介します。
- 遺産分割で揉めた場合
- 連絡が取れない場合
- 遺言書の内容が偏っている場合
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(1)遺産分割で揉めた場合|弁護士による調整・調停・審判
遺産分割について兄弟間で意見が対立した場合、本人同士の話し合いによる解決は難しいケースが多いです。
この場合、弁護士に遺産分割協議の調整を依頼することが解決策になり得ます。弁護士が論点を整理した上で、ひとつずつ問題を解決していくことで、遺産分割協議の成立が近づきます。
どうしても遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に対する遺産分割調停の申し立てを検討しましょう。
遺産分割調停では、有識者から選任される調停委員が仲介を行い、遺産分割に関する合意を目指します。本人同士で話し合う場合に比べると、調停委員が客観的な立場から仲介を行うため、冷静で建設的な議論が期待できます。
遺産分割調停が不成立になった場合は、家庭裁判所が審判を行い、強制的に遺産分割の方法を決定します(民法第907条第2項)。兄弟間での話し合いが不可能であっても、最終的に家庭裁判所の審判が行われれば、何らかの方法で遺産分割問題を解決することが可能です。 -
(2)連絡が取れない場合|弁護士による連絡・調停・審判
仲の悪い兄弟と連絡が取れない場合は、弁護士に連絡役を依頼しましょう。弁護士が代理人として連絡することにより、兄弟からの返信頻度が上がることがあります。
兄弟の所在が不明である場合も、弁護士に依頼すれば探してもらえます。弁護士は、戸籍の附票を職務上請求により取り寄せるなどして、行方の分からない兄弟の所在をスムーズに探すことができます。
弁護士を通じて連絡しても、兄弟からの返信が得られない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。兄弟が欠席を貫くようであれば、遺産分割調停は不成立となりますが、家庭裁判所の審判によって遺産分割の方法を決めることができます(民法第907条第2項)。 -
(3)遺言書の内容が偏っている場合|遺言無効・遺留分侵害額請求
被相続人の作成した遺言書が、仲の悪い兄弟を不当に優遇する内容だった場合には、「遺言無効」と「遺留分侵害額請求」という2つの対応が考えられます。
まずは、遺言無効の主張を検討しましょう。たとえば以下のような場合には、遺言が無効になります。- 遺言書の形式に不備がある場合
- 遺言書が偽造されたものである場合
- 兄弟が被相続人をだまし、または脅迫して遺言書を作成させた場合
- 遺言の当時、被相続人に意思能力がなかった場合
遺言無効の主張が認められなくても、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人の方には「遺留分」が認められています(民法第1042条第1項)。
遺留分の制度は、残された相続人の生活の保障や、潜在的持分の清算などを確保するために、一定範囲の相続人に一定額の財産を取得する権利を保障するというものです。
取得した遺産額が遺留分を下回った場合は、「遺留分侵害額請求」によって不足額の支払いを受けることが可能です(民法第1046条第1項)。
遺言無効と遺留分侵害額請求はいずれも、訴訟を通じて決着をつけることになるケースが多いです。法的に根拠のある主張を展開し、有利な解決を目指すためには、弁護士への依頼をおすすめします。
3、兄弟に内緒で遺産分割を行ったらどうなる?
兄弟の仲が悪いからといって、相続分を有する他の兄弟に黙って遺産分割を行ってしまうことは厳禁です。遺産分割が無効となるほか、勝手に処分した遺産については返還を求められてしまうのでご注意ください。
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(1)遺産分割は無効|やり直す必要がある
遺産分割には、相続人全員の参加が必須とされています。参加していない相続人が1人でもいる状態で行われた遺産分割は、無効になってしまいます。
遺産分割が無効になると、遺産分割協議をやり直さなければならず、二度手間になります。また、すでに相続税申告を行った場合には、更正の請求または修正申告による税額の修正が必要となり、非常に面倒です。
このような事態を防ぐためにも、遺産分割協議は必ずすべての相続人が参加して行う必要があります。仲が悪いからといって、兄弟に連絡せず遺産分割協議を進めてはいけません。 -
(2)勝手に処分した遺産の返還を求められる
相続権を持つ兄弟に黙って行った遺産分割は無効であり、取得した遺産は相続財産に返還する必要があります。
仮に無効な遺産分割によって取得した預貯金を使ってしまったり、不動産を売却してしまったりした場合は、相続人全員の同意により、当該遺産が存在するものとみなして遺産分割を行うことができます(民法第906条の2)。
ただし、現存する遺産だけでは適切な遺産分割ができない場合は、使ってしまった遺産の価値に相当する金銭の返還を求められるかもしれません。遺産を使ってしまって手元にない場合は、返還の資金を準備するのに苦労するでしょう。
遺産分割の無効のみならず、使ってしまった遺産の返還までもが問題になると、相続トラブルはいっそう複雑化してしまいます。このような事態を防ぐためにも、遺産分割は必ず相続人全員で行いましょう。
4、仲が悪い兄弟と相続で揉めた場合は弁護士に相談を
仲が悪い兄弟の間で相続トラブルが発生した場合、本人同士の話し合いによって解決することは期待できません。感情的な争いがヒートアップしてしまい、トラブルが長期化してしまう可能性が高いでしょう。
そんなときは、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、法的に論点を整理した上で、相続トラブルを着実に解決へと導きます。また、依頼者の権利を法的根拠に基づいて主張し、適正な条件による遺産分割の実現をサポートします。
遺産を巡る骨肉の争いに正面から向き合うと、精神的にも疲弊してしまう方が多いです。弁護士が代理人として対応する場合は、他の相続人からのプレッシャーを弁護士が受け止めますので、ご本人にかかるストレスは大きく軽減されるでしょう。
兄弟間の相続トラブルを解決するためには、弁護士への相談が近道です。兄弟との相続トラブルにお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
共に相続人である兄弟の仲が悪いと、遺産分割に関するトラブルが生じやすいです。兄弟間の相続トラブルを、早期に適切な形で解決するためには、弁護士への相談がおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。複雑にこじれてしまいがちな兄弟間の相続トラブルについても、実績のある弁護士が丁寧に対応し、早期解決を目指します。遺産分割協議はもちろん、調停・審判に発展したとしても、弁護士に任せれば安心です。
遺産相続に関するトラブルに巻き込まれた方は、お早めにベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています