離婚した親の遺産相続|子どもの相続権と相続分とは
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令和3年(2021年)の鹿児島市の出生者数は4781名、死亡者数は6194名でした。
被相続人が亡くなると相続が開始されますが、離婚によって別々に住んでいた親が亡くなった場合でも、子どもは原則として親の遺産を相続することができます。
今回は、離婚した親の遺産を相続する際の手続きや注意点などを、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和3年度鹿児島市統計書」(鹿児島市)
1、離婚した親の遺産は誰が相続するのか?
離婚を機に別々に住むようになった親が亡くなった場合でも、子どもは親の遺産を相続することができます。
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(1)死亡当時の配偶者と子が相続するのが原則
離婚した親が亡くなった場合、法定相続人として遺産を相続するのは、原則として死亡当時の配偶者と子どもです(民法第890条、第887条第1項)。
被相続人の死亡当時に配偶者がいなかった場合には、子どもだけが相続人となります。 -
(2)亡くなった親が親権者でなくても、子は遺産を相続できる
亡くなった親がかつて離婚したことや、子どもの親権者でなくなったことは、子どもの相続権に影響を及ぼしません。離婚によって法律上の親子関係が消滅することはなく、法律上の親子関係が存続している限り、子どもは親の遺産の相続権を有するからです。
したがって、亡くなった親が親権者でなくても(未成年当時に親権者でなかったとしても)、子どもは親の遺産を相続できます。 -
(3)子が亡くなっている場合は?
親の死亡時点において、子どもがすでに亡くなっている場合には、代襲相続によってさらにその子ども(被相続人の孫)が相続人となります(民法第887条第2項)。
代襲相続人の相続分は、被代襲者と同じです。また、ひ孫以降による再代襲相続も認められています(同条第3項)。
代襲相続人がいない場合は、被相続人の直系尊属(父母など)が相続人となります(民法第889条第1項第1号)。
直系尊属もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(同条第2号)。もしも被相続人の死亡時点で兄弟姉妹が死亡している場合には、その子である甥(おい)・姪(めい)による代襲相続が認められています(同条第2項)。 -
(4)特別養子縁組をした場合、実親の遺産は相続できない
被相続人の子どもが、被相続人の死亡前に養子として特別養子縁組をした場合、子どもは遺産を相続することができません。特別養子縁組によって、実親である被相続人との法律上の親子関係が消滅しているためです(民法第817条の9)。
これに対して、通常の養子縁組をしたにすぎない場合には、実親との法律上の親子関係は消滅しないため、亡くなった実親の遺産を相続できます。
2、離婚した亡き親の遺産を分割する手続きの流れ
離婚した親が亡くなった場合において、遺産分割の手続きは以下の流れで進行します。
- ① 遺言書の有無を確認する
- ② 相続人を調査・確定する
- ③ 分割すべき遺産を調査・確定する
- ④ 相続人全員で分割方法を協議する
- ⑤ 遺産分割協議書を作成する
- ⑥ 協議がまとまらなければ調停・審判
- ⑦ 協議・調停・審判に従って遺産の名義変更を行う
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(1)遺言書の有無を確認する
まずは、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書が存在すれば、原則としてその内容のとおりに遺産を分ける必要があります。
遺言書は、被相続人の遺品の中に存在する場合があるほか、銀行の金庫・公証役場・法務局などに保管されていることもあります。念のため、地元の銀行や法務局に対する照会や、公証役場での遺言検索を行いましょう。
なお、相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる内容で遺産を分割することも可能です。 -
(2)相続人を調査・確定する
遺産分割協議には、相続人全員が参加しなければなりません。1人でも相続人が欠けた状態で行われた遺産分割は、原則として無効です。
そのため、遺産分割協議を行う前に、相続人を調査した上で確定しましょう。相続人を正しく確定するためには、戸籍謄本などを取り寄せて調査し確認する必要があるため、相続問題の解決実績がある弁護士への相談をおすすめします。 -
(3)分割すべき遺産を調査・確定する
遺産分割の対象となる遺産についても、もれなく調査した上で確定することが大切です。
特に、遺産を別の相続人が管理している場合には、遺産隠しが行われていないか注意深くチェックする必要があります。預貯金口座の入出金履歴などを調べて、不審な財産の移動が行われていないかを確認しましょう。 -
(4)相続人全員で分割方法を協議する
相続人と相続財産が確定できたら、相続人全員で遺産分割の方法を話し合います。
円満に遺産分割を完了するためには、他の相続人の主張や希望にも耳を傾けた上で、必要に応じて譲歩すべき場合もあります。譲れない部分と譲ってもよい部分を明確化して、メリハリのある交渉を行いましょう。 -
(5)遺産分割協議書を作成する
遺産分割の方法について相続人全員が合意に達したら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の相続手続き、相続税申告などの手続きを行う際の添付書類となります。これらの手続きが必要な場合には、印鑑登録された実印による押印を要する点にご注意ください。
遺産分割協議書の内容・形式に不備があると、各種の相続手続きが滞ってしまうおそれがあります。後々のトラブルを避けるためにも、弁護士に依頼して、きちんとした遺産分割協議書を作成しておくと安心です。 -
(6)協議がまとまらなければ調停・審判
遺産分割協議が合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。
遺産分割調停では、有識者から選任される調停委員の仲介により、相続人全員の間で遺産分割に関する合意を目指します。合意に達すれば調停成立となり、調停調書が作成されます。
調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が審判によって遺産分割の方法を決定します。 -
(7)協議・調停・審判に従って遺産の名義変更を行う
協議・調停・審判によって遺産分割の方法が確定したら、その内容に従って各遺産の名義変更を行います。
たとえば不動産については、法務局で所有権移転登記手続きを行う必要があります。預貯金については、金融機関に相続手続きを申請し、相続人口座へ被相続人の預貯金を払い出してもらいます。
遺産の種類によって名義変更の手続きが異なるので、わからないことがあれば弁護士に相談するとよいでしょう。
3、離婚した亡き親の遺産を分割する際の注意点
離婚した親の遺産を分割する際には、通常の相続に比べて、特に以下の各点にはいっそうの注意が必要です。
- ① 債務が存在する可能性あり|相続放棄の必要がないか調査・検討を
- ② 遺産隠しにも要注意|徹底的な財産調査が重要
- ③ 再婚後の子との間で揉めやすい|難航する場合は弁護士に相談を
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(1)債務が存在する可能性あり|相続放棄の必要がないか調査・検討を
離婚を機に疎遠になった親がどのような生活を送っていたのか、子どもは把握していないケースが多いでしょう。もしかすると、知らないうちに多額の借金を背負っているかもしれません。
被相続人に多額の借金がある場合には、相続放棄を検討すべきです。相続放棄をすれば、被相続人の債務を相続せずに済みます。
ただし相続放棄には、原則として「相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という期限が設けられています。被相続人の遺品や預貯金の入出金履歴などを調べて、債務を負担している形跡がないかを確認しましょう。 -
(2)遺産隠しにも要注意|徹底的な財産調査が重要
被相続人が再婚していた場合、再婚後の配偶者やその子どもが遺産を管理しているケースがあります。この場合、遺産隠しの可能性に注意を払う必要があります。
再婚後の配偶者や子どもに遺産の開示を求めるなど、徹底的に遺産の調査を行いましょう。自力で調べ切ることが難しい場合は、弁護士に調査をご依頼ください。 -
(3)再婚後の配偶者や子と揉めやすい|難航する場合は弁護士に相談を
亡くなった親の再婚後の配偶者や子と遺産分割協議を行う際には、感情的な部分が原因で話し合いが難航しやすい傾向にあります。
本人同士で協議を続けると、悪感情がどんどん増幅し、もめ事がさらに深刻化してしまいがちです。そのまま協議を続けても合意が難しいと思われる場合には、早い段階で弁護士にご相談ください。
4、遺産相続に関するお悩み・トラブルは弁護士にご相談を
亡くなった親の相続では、再婚後の配偶者や子と遺産分割協議を行うケースもあります。この場合、通常の相続よりもトラブルの発生頻度が高い傾向にあります。
円滑に相続手続きを完了するためには、弁護士への依頼がおすすめです。相続人・相続財産の調査から、遺産分割に関する協議・調停・審判への対応まで、一括して弁護士に任せることができるため、時間や精神的負担を軽減することができます。
遺産分割に関するお悩みやトラブルは、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
親同士の離婚を機に別居していた親が亡くなった場合にも、子どもは親の遺産を相続できます。ただし、再婚後の配偶者や子との間でトラブルに発展する可能性があるため、弁護士のサポートを受けながら対応すると安心です。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。亡くなった親の相続について、どのように対応すべきかお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています