相続人調査は自分でできる? 流れや注意点、弁護士に依頼するメリット
- 遺産を受け取る方
- 相続人調査
- 自分で

鹿児島市が公表している人口統計によると、令和4年の鹿児島市の死亡者数は7175人で前年より30人増加しました。近年、死亡者数が増加傾向にある中で、相続に関する手続きを行う機会も増えています。
相続が発生したら、まずは相続人の確定が重要です。しかし調査に時間がかかることもあるため、弁護士などに依頼することを考える方もいるでしょう。
本記事では、相続人の調査方法や注意点、弁護士に依頼するメリットについてベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。


1、相続人調査は自分でできる?
相続人の調査は自分で行うことも可能です。
ただし、正確に進めるためには慎重に行うことが重要です。相続人を確定せずに協議を進めると、後から新たな相続人が判明し、協議が無効になってしまうリスクがあるからです。
自分で調査を進める場合、以下のケースであれば比較的短期間ですむこともあります。
- ① 故人の家族関係がシンプルで、相続人が配偶者や子どものみ
- ② 故人と関係が深く、家族構成を把握している人がいる
①の家族関係がシンプルとは、被相続人が生前に転籍しておらず、本籍地の役所で戸籍を取得すればすむケースです。また、②の場合も、相続人の範囲を特定しやすく、調査が容易になります。
しかし、被相続人が転籍を繰り返していると、戸籍をすべてさかのぼる必要があり、複数の役所へ請求しなければなりません。
相続人が誰なのか明確でない場合や、兄弟姉妹が相続人となるケース、長年交流のなかった相続人がいる場合は、調査が困難になることもあります。また、戸籍をひとつでも見落とすと調査が不完全となり、その後の手続きに支障をきたすことも考えられます。
相続人の確定は、相続手続きを円滑に進めるために不可欠なステップです。正確に行う自信がない場合や、手続きを早く終えたい場合は、弁護士に依頼することも選択肢のひとつです。
2、相続人調査の流れ
では、具体的な相続人の調査はどのように行うのでしょうか。流れに沿って解説します。
-
(1)相続人の範囲・順位を確認する
まず、相続人の範囲と順位を確認します。
配偶者は常に法定相続人となりますが(民法第890条)、それ以外の相続人は、子ども(直系卑属)(民法第887条第1項)、親(直系尊属)(民法第889条第1項第1号本文)、兄弟姉妹(民法第889条第1項第2号)の順に決まります。子どもがいない場合は親、親もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
また、子どもがすでに亡くなっている場合は孫が代わりに相続する「代襲相続」が発生します(民法第887条第2項、同法第889条第2項)。
相続順位を誤ると、手続きをやり直さなければならないため、慎重に確認することが大切です。 -
(2)被相続人の出生から死亡(除籍)までの戸籍謄本を取得する
次に、被相続人の出生から死亡(除籍)までのすべての戸籍謄本を取得します。これにより、共同相続人が明らかになります。
戸籍は転籍や結婚、離婚などで新しく作成されるため、1通だけでは相続人を特定できないことがほとんどです。
特に、過去に何度も転籍している場合は、各自治体に戸籍を請求し、時系列順にさかのぼって取得する必要があります。
これを怠ると、本来相続人であるはずの人物が見落とされるリスクがあるため、戸籍を徹底的に収集することが重要です。 -
(3)相続人全員の戸籍謄本を取得する
被相続人の戸籍がすべてそろったら、相続人全員の現在の戸籍謄本を取得します。これにより、相続人が存命であることを確認し、相続関係を確定させることができます。
配偶者や子どもであれば、被相続人の戸籍に記載されていることが多いため、新たに戸籍を取得しなくても確認できる場合があります。
しかし、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、各相続人の戸籍を個別に取得する必要があるため、手続きに時間がかかることもあります。
お問い合わせください。
3、相続人調査を自分でやる場合の注意点
相続人の調査は自分で行うことも可能ですが、正確に進めるには戸籍に関する知識が必要であり、手間と時間がかかることもあります。
特に、相続関係が複雑な場合や、転籍が多い場合は慎重に対応しなければなりません。ここでは、自分で相続人調査を進める際の注意点について解説します。
-
(1)現在戸籍や除籍、現戸籍の違いなど、戸籍に関する知識が必要になる
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて取得する必要があります。しかし、戸籍には「現在戸籍」「除籍」「改製原戸籍」などの種類があり、それぞれ役割が異なります。
戸籍の種類 概要 現在戸籍 現時点で有効な戸籍であり、被相続人の最終的な戸籍がこれにあたります 除籍 戸籍から全員が抜けた状態のもの。結婚や死亡、転籍などで戸籍から抜けると「除籍」となります 改製原戸籍 戸籍制度の改正によって作り直された古い戸籍。現在の戸籍に記載されていない情報が含まれていることがあります
相続人の範囲を正確に把握するには、被相続人の出生から死亡までの全戸籍をつなげて確認しなければなりません。
たとえば、現在戸籍に記載されていない子どもが過去の戸籍に記録されていることもあるため、最新の戸籍だけを取得するだけでは不十分です。
このため、相続人調査を進めるには、戸籍の仕組みを理解し、どの種類の戸籍をどのタイミングで取得する必要があるのかを把握することが重要です。 -
(2)電子化されていない戸籍も集めなければならないケースもある
現在の戸籍は電子化されていますが、改製原戸籍や除籍の一部は紙のまま保存されていることがあります。特に、明治時代や戦前に作成された戸籍は手書きであり、判読が難しいことも多いです。
また、古い戸籍は戸籍法の改正によって何度も作り直されており、改製前の戸籍を取得しないと相続人を特定できない場合もあります。
たとえば、昭和23年以前の戸籍は、記載されている家族全員の情報がまとまっている「家単位」の形式ですが、その後の改製によって個人単位に分かれています。そのため、現戸籍には記載されていない相続人が、古い戸籍を確認することで判明することもあります。
これらの戸籍を取得するには、各市区町村の役所に請求する必要がありますが、役所ごとに手続きが異なる場合もあります。
請求の際は、本籍地の市区町村を確認し、適切な方法で申請することが必要です。 -
(3)弁護士への相談を検討する
相続人調査は、相続人の人数が多い場合や、戸籍の収集が困難な場合には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士は、戸籍の読みときや請求手続きの代行が可能なため、手間を省くことができます。また、相続人の中に行方不明者がいる場合や、相続放棄の手続きを検討している場合など、法的な判断が必要なケースでは、専門家に相談することで適切な対応が可能になります。
さらに、相続人調査を誤ると、遺産分割協議が無効になる可能性があります。たとえば、知らない相続人が後から判明した場合、すでに合意した遺産分割全体をやり直す必要が生じることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、弁護士のサポートを検討することが望ましいでしょう。
4、相続人調査を弁護士に依頼するメリット3つ
相続人の調査は自分で行うこともできますが、手続きが煩雑で時間がかかるため、弁護士に依頼することで多くのメリットが得られます。
特に、相続関係が複雑な場合や、相続人同士で意見の対立がある場合には、弁護士のサポートが重要になります。ここでは、弁護士に依頼することで得られる3つのメリットについて解説します。
-
(1)自分でやる手間と時間が省けて正確な相続人調査が期待できる
相続人調査では、被相続人の戸籍を出生から死亡までさかのぼり、法定相続人を特定する必要があります。しかし、戸籍の取得には役所への請求や過去の戸籍の読み解きが必要であり、一般の方には大きな負担となります。
また、被相続人が転籍を繰り返している場合、複数の自治体に戸籍を請求しなければならず、手続きに時間がかかります。さらに、電子化されていない古い戸籍は手書きで判読が難しく、内容を正しく理解するための知識も必要になります。
弁護士に依頼すると、相続に必要なすべての戸籍を収集し、正確に相続人を確定してもらうことができます。また、戸籍の不備があった場合にも適切に対応してもらえるため、自分で調査するよりもスムーズに進めることができます。 -
(2)相続関係が複雑な場合でも相続人を確定できる
被相続人の家族構成がシンプルで、法定相続人が配偶者や子どものみであれば、比較的簡単に調査できます。
しかし、以下のようなケースでは相続関係が複雑になり、自分で相続人を特定するのが難しくなることがあります。相続人の特定が難しいケース
- 婚外子や認知された子どもがいる場合
- 養子縁組をしている場合
- 兄弟姉妹が相続人になる場合
- 相続人の中に行方不明者がいる場合
- 被相続人が海外に戸籍を持っていた場合
特に、婚外子や養子の相続権は、古い戸籍をたどることで初めて判明することがあり、知らずに手続きを進めると、後になって相続のやり直しが必要になることもあります。
弁護士は、こうした複雑なケースでも相続人を正確に確定し、適切に手続きを進めます。
また、相続人の行方がわからない場合でも、住民票の附票を取得して住所を特定し、必要に応じて家庭裁判所を通じた手続きを行うことができます。 -
(3)相続人調査以外のトラブルも相談できる
相続手続きでは、相続人の確定だけでなく、遺産分割協議や遺言の有無、相続放棄など、さまざまな問題が発生することがあります。特に、相続人同士で意見が対立している場合や、特定の相続人が遺産を独占しようとしている場合には、早めに専門家に相談することが重要です。
弁護士は、相続人調査に加えて、相続に関連するトラブルについてもサポートします。たとえば、以下のような問題も対応が可能です。- 相続人同士で意見がまとまらない場合の調整
- 遺産分割協議書の作成
- 遺言の有効性についての確認
- 相続放棄の手続き
また、相続人の間でトラブルが発生した場合、弁護士が代理人となることで、感情的な対立を避けながら円滑に話し合いを進めることができます。
相続問題は、家族や親族間で長引くと関係が悪化することもあるため、弁護士を交えて早めに対応することが望ましいでしょう。
5、まとめ
相続人調査を自分で行うことは可能ですが、相続人が少なく関係が明確なケースでない限り、慎重な対応が必要です。
遺産分割協議の途中で予想外の相続人が見つかることもあり、その場合、手続きのやり直しが必要になる可能性があります。また、古い戸籍の解読が難しい場合や、複数の自治体に戸籍を請求しなければならない場合は、時間と手間がかかります。
相続人の確定を誤ると、遺産分割協議が無効になるリスクもあるため、正確な相続人調査が重要です。
弁護士に依頼すれば、適切な戸籍を迅速に収集し、相続関係を正確に把握できるため、スムーズに手続きを進めることができます。相続人の調査に不安がある場合は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでまずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています