離婚届だけじゃない! 離婚後の手続きをまとめて解説
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鹿児島県が公表している「令和元年人口動態統計」の資料によると、令和元年の鹿児島市内での離婚件数は、1109件でした。平成30年の離婚件数が976件であったことからも毎年一定数の夫婦が離婚を選択していることがわかります。
協議離婚をする場合には、市区町村役場に離婚届を提出することによって離婚は成立します。しかし、離婚自体はそれで完了しますが、離婚後には、さまざまな手続きを行わなければなりません。スムーズに手続きを行わなければ、その後の生活にも影響を生じることがありますので、あらかじめ必要となる手続きを知っておくことが大切です。
今回は、離婚後に必要となる手続きについて、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
1、身分や住所に関する手続き
離婚に伴う身分や住所に関する手続きとしては、以下のものが挙げられます。
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(1)離婚届の提出
協議離婚の場合には、離婚届を市区町村役場に提出することによって離婚が成立します。離婚届は、届出人の所在地または本籍地の市区町村役場に提出します。本籍地以外の市区町村役場に離婚届を提出する場合には、戸籍謄本が必要になりますので注意しましょう。
また、婚姻時に苗字を変更した方は、離婚によって自動的に元の苗字に戻ることになります。婚姻生活が長いなどの理由で婚姻中の苗字を離婚後も名乗りたいという場合には、離婚から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出することによって、引き続き婚姻中の苗字を名乗ることができます。 -
(2)社会保険の変更
婚姻中に配偶者の扶養になっていた場合には、健康保険の変更手続きが必要になります。
① 社会保険から社会保険への変更
会社員の配偶者の扶養に入っていた場合には、配偶者の会社の社会保険から外れることになります。そのため、まずは、配偶者の会社から「健康保険資格喪失証明書」を取得します。
離婚後は、ご自身の勤務先の社会保険に加入するという場合には、健康保険資格喪失証明書をご自身の勤務先に提出すれば、加入の手続きを行ってくれます。
② 社会保険から国民健康保険への変更
離婚後にすぐに働かないという場合には、国民健康保険の加入手続きをしなければなりません。その場合にも、配偶者の会社から取得した「健康保険資格喪失証明書」が必要になります。資格喪失日から14日以内に市区町村役場で国民健康保険への加入手続きを行うようにしましょう。
③ 国民健康保険から社会保険への変更
夫が自営業であった場合には、その妻は、夫を世帯主とした国民健康保険に入っていることになります。離婚後、ご自身の勤務先の社会保険に加入する場合には、勤務先で加入の手続きをするとともに、社会保険に加入した日の翌日から14日以内に国民健康保険の脱退の手続きを行います。
国民健康保険の脱退手続きを行わないと、国民健康保険税を二重に請求されてしまいますので注意しましょう。
④ 国民健康保険から国民健康保険への変更
婚姻中に世帯主を夫とする国民健康保険に加入していた妻が、離婚後も国民健康保険を継続するという場合にも、世帯変更の手続きが必要になります。
自分自身を世帯主として国民健康保険に加入し、子どもがいる場合には被保険者として子どもも加入します。 -
(3)パスポートの変更、運転免許証の変更
離婚によって、氏名・本籍に変更が生じた場合には、パスポートの記載事項変更手続きが必要になります。なお、離婚によって住所が変更したとしても、住所はパスポートの記載事項ではありませんので、パスポートの変更は不要です。
また、運転免許証も住所や姓が変わった場合には手続きする必要があります。最寄りの警察署や運転免許更新センターで手続きを行いましょう。 -
(4)カード類の変更
離婚によって氏名や住所に変更が生じた場合には、キャッシュカードやクレジットカードなどの変更手続きが必要になります。また、婚姻中に家族カードを発行していた場合には、離婚時に配偶者から返却を求めるとともに、カード会社に連絡をして、解約手続きをする必要もあります。
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(5)転出・転入届
離婚後にそれまで生活していた自宅から引っ越すことになった場合には、住民票の異動の手続きが必要になります。引っ越し先が同一市区町村内である場合には、「転居届」の提出だけで足りますが、別の市区町村に引っ越す場合には、現市区町村に「転出届」を提出して、「転出証明書」の交付を受けます。その後、引っ越し先の市区町村で「転入届」と「転出証明書」を提出します。
住民票の異動は、引っ越しなどをした日から14日以内にしなければなりませんので、忘れずに行いましょう。 -
(6)郵便物の転送
離婚後に引っ越しなどで住所を変える場合には、郵便局の窓口またはインターネット上で転居届を出しておきましょう。転居届を提出することによって、1年間は旧住所宛ての郵便物を新住所に無料で転送してもらうこともできます。
2、子どもに関する手続き
子どもがいる場合には、ご自身の手続きだけでなく子どもに関する手続きも必要になります。子どもに関する手続きとしては、以下のものが挙げられます。
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(1)子の氏の変更手続き
離婚によって元の苗字に戻った方が子どもの親権を取得したとしても、子どもの苗字は自動的に変更されません。この場合には、親の苗字と子どもの苗字が異なる状態になってしまいますので、子どもの苗字を自分の苗字と同じにしたいという場合には、子の氏の変更手続きをする必要があります。
子の氏の変更手続きをするためには、子どもの住所地の家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てを行い、家庭裁判所の許可を得なければなりません。家庭裁判所から子の氏の変更許可が出た場合には、市区町村役場に入籍の届出を行うことによって、子どもの苗字が変更されるとともに、ご自身の戸籍に子どもを入れることができます。 -
(2)自治体の児童手当などの手続き
離婚によって子どもの親権を取得したとしても、自動的に児童手当の受給者が変更になるわけではありません。児童手当の受給者を変更する場合には、市区町村役場の窓口で所定の手続きを行う必要がありますので、離婚届の提出の際に併せて相談をしてみるとよいでしょう。
また、離婚をして一人親になった場合には、自治体からさまざまな経済的な支援を受けることができます。代表的なものとしては、児童扶養手当や医療費助成制度などがあります。支援内容や要件については、自治体によってさまざまですので、そちらについても併せて確認をしてみるとよいでしょう。
3、財産に関する手続き
離婚時に財産に関する取り決めをした場合には、それについての手続きも必要になります。
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(1)家や車の名義変更
離婚の際に財産分与の取り決めをして、自宅や車などを取得することになった場合には、不動産の所有権移転登記や自動車の名義変更の手続きが必要になります。ご自身で手続きを行うことに不安がある場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談をするようにしましょう。
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(2)年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割することができる制度のことをいいます。年金分割をすることによって、厚生年金に加入し、保険料を納めていたのと同様に扱われますので、将来もらえる年金が増えることになります。
年金をどう分けるか話し合いや裁判で決定した後、最寄りの年金事務所において「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」を提出し、年金分割をします。ただし、この手続きは、離婚日の翌日から2年が過ぎると請求することができなくなりますので、離婚後は、早めに手続きを行うようにしましょう。
4、離婚後、お困りのことがあれば、弁護士へ相談を
離婚後もさまざまな手続きを行わなければならず、場合によってはトラブルが生じることもありますので、お困りのことがあれば弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)養育費が支払われないという場合にも対応できる
離婚時に養育費の取り決めをしたとしても、まったく支払ってもらえなかったり、最初だけ支払われたものの、その後支払われなくなったということも少なくありません。このような場合には、弁護士が養育費の支払い義務者と交渉をすることによって、過去の滞納分も含めた養育費を支払ってもらえるよう、説得することができます。
弁護士の説得に応じない場合には、最終的には強制執行の手続きを行い、支払い義務者の預貯金や勤務先から支払われる給料などを差し押さえるなどして養育費の回収を行います。 -
(2)「子の氏の変更許可の申立て」のサポートが可能
離婚後に子どもを自分と同じ戸籍に入れたり、子どもの苗字を自分と同じ苗字にするためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立て」が必要になります。離婚後は、さまざまな手続きに追われることになりますので、不慣れな裁判所への手続きも行わなければならないとなると、その負担は非常に大きなものとなるでしょう。
弁護士に依頼をすることによって、「子の氏の変更許可の申立て」に関する手続きについてはすべてサポートしてもらうことができますので、手続きに要する負担は相当軽減されるはずです。
5、まとめ
今回ご紹介したとおり、離婚後にはさまざまな手続きを行う必要があります。スムーズに手続きを行うためにも、離婚前から必要な手続きを調べておき、リスト化するなどして漏れがないように工夫することも大切です。どのような手続きが必要となるのかわからないという場合には、一度弁護士に相談をしてみることも有効な手段です。
離婚や離婚後の手続きについてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています