同居中に離婚調停などで離婚することは可能? 別居した方が良い?
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人口動態統計によると、2020年(令和2年)中の鹿児島県における離婚件数は2521件でした。そのうち、鹿児島市内における離婚が953件で、全体の4割弱を占めています。
離婚の際には、夫婦が同居した状態でも離婚調停を申し立てることは可能です。ただし、子どもの親権を獲得したい場合には、子どもを連れて別居した方が有利になる面があります。
同居のまま離婚を求めるか、離婚前に別居するかは、家庭の状況を踏まえて総合的に判断しましょう。今回は、同居中に離婚調停などを進める際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
参考:「令和元年人口動態統計」(鹿児島県)
目次
1、同居中の離婚調停について
夫婦が同居した状態のまま、離婚調停の申し立てが行われるケースはよくあります。夫婦関係の状況によっては、同居したままの方がスムーズに離婚調停を進められる可能性もあるでしょう。
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(1)同居したままでも離婚調停の申し立ては可能
離婚調停の申し立てに当たって、夫婦が別居していることは要件とされていません。したがって、同居したままの夫婦であっても、別居している夫婦と同様に離婚調停を申し立てることができます。
なお、離婚が成立した後でも、夫婦が合意の下で同居を続けるケースもあります。婚姻関係を解消した後も引き続き同居することは、事実婚または同棲関係に当たるため、法的に全く問題ありません。 -
(2)同居したまま離婚手続きを進めるメリット
夫婦が同居を続ける場合、家にいる時でも、時機を見て離婚に関する話し合いをすることができます。
夫婦の関係性が比較的良好であれば、離婚に関する建設的な話し合いを行うことができるでしょう。そうであれば、家で引き続き時間を共有することは、スムーズな離婚成立に向けてプラスに働く可能性が高いです。
もちろん、夫婦で話し合いを重ねる中で、婚姻関係を続けていく方がよいと判断すれば、離婚を取りやめても構いません。夫婦関係が険悪でなく、今後の方向性について柔軟に検討したい場合は、同居したまま離婚手続を進めることも一案です。
2、現在同居中で、別居を検討している場合の注意点
夫婦関係が険悪になってしまった場合や、相手と距離を置いて一人でよく考えたい場合は、別居した上で離婚手続を進めた方がよいでしょう。
離婚前に別居することを検討する場合は、以下の各点にご注意ください。
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(1)別居について相手の同意を得る|DV・モラハラの場合は例外
離婚前に別居したい場合には、夫婦には同居義務(民法第752条)があるので、相手の同意を得ることが望ましいです。しかし、相手からDVやモラハラを受けている場合などは、ご自身の身を守ることが最優先ですので、すぐにでも別居を検討しましょう。
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(2)別居前に生活のめどを付ける
配偶者と別居した場合、基本的にはご自身の資産と収入だけで生活しなければなりません。将来的には配偶者に婚姻費用を請求できる可能性がありますが、実際に婚姻費用を受け取れるのは離婚成立時となるケースが多いです。
そのため、できる限り別居前の段階で、別居後の生活について収入等のめどを付けておくことが望ましいです。特に専業主婦(主夫)の方は、安定した収入を得られる仕事を探しておきましょう。両親の協力を得られる場合は、実家に身を寄せることも一つの選択肢です。 -
(3)別居期間中は婚姻費用を請求可能
配偶者と別居している期間についても、離婚が成立するまでの間は、同居中と同様に婚姻費用(生活費など)の分担義務が生じます(民法第760条)。
別居中の夫婦はそれぞれの生活を営むので、生活の中で自然に婚姻費用を分担することはなくなります。そのため離婚協議の最中、または離婚成立の段階で、婚姻費用の精算を行うのが一般的です。
婚姻費用は、基本的に収入の多い側が少ない側に対して支払います。金額の目安については、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」をご参照ください。
参考:「平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」(裁判所)
婚姻費用の請求は、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟と併せて行うケースが多いです。適正額の婚姻費用を獲得したい場合は、弁護士へのご相談をお勧めいたします。
3、同居中に離婚を求める際の手順
同居中の配偶者に対して離婚を求める際の手順は、基本的に別居中の場合と変わりません。具体的には、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟の順で手続を進めることになります。
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(1)手順1|離婚協議
まずは夫婦で話し合い、協議離婚を目指すのが一般的です。
同居している状態であれば、特にかしこまった連絡をすることなく、自然に話し合いを始めやすいでしょう。今後の夫婦の方向性を話し合う中で、離婚した方がお互いにとって良いと判断すれば、きちんとした形で離婚協議へと移行します。
離婚協議では、財産分与・慰謝料・婚姻費用・親権・養育費・面会交流の方法など、さまざまな離婚条件についても取り決めなければなりません。後のトラブルを防ぐため、夫婦が同居した状態であっても、それぞれ別の弁護士を立てて離婚協議を行うことも考えられます。 -
(2)手順2|離婚調停の申し立て
離婚協議がまとまらなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停では、調停委員による仲介の下で、離婚条件についての話し合いを継続します。調停委員との面談は個別に行われ、かつ客観的な立場にある調停委員によって調整が行われるので、冷静な話し合いが行われやすい傾向にあります。
同居した状態での離婚協議が煮詰まってしまった場合は、離婚調停の申し立てを検討すべきでしょう。 -
(3)手順3|離婚訴訟の提起
離婚調停が不成立となった後も、なお離婚を求める場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起しましょう。
離婚訴訟では、離婚を求める側が、以下のいずれかの法定離婚事由を立証する必要があります(民法第770条第1項)。- (a)不貞行為
- (b)悪意の遺棄
- (c)3年以上の生死不明
- (d)強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
- (e)その他婚姻を継続し難い重大な事由
また、ご自身が求める離婚条件について、それが適正・正当であることを裏付ける事実の主張・立証も必要です。
離婚訴訟を適切に進め、有利な判決を獲得したい場合には、弁護士へのご相談を強くおすすめします。
4、同居したまま離婚手続きを進める際の注意点
配偶者と同居した状態で離婚手続きを進める場合、特に親権争いと家での過ごし方に関する以下の事項にご注意ください。
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(1)親権争いに関する注意点
親権争いに当たっては、子どもと同居している親の方が明確に有利になります。家庭裁判所は、子どもの養育環境をできるだけ変えないように、現在同居している親に親権を与える判断をする傾向にあるからです。
この点、夫婦が同居している場合は、子どもと同居しているかどうかの点について、親権争いに関する有利・不利はありません。どうしても親権獲得にこだわる場合は、原則として配偶者の承諾を得たうえで、子どもを連れて別居することも検討すべきでしょう。
ただし、配偶者に黙って勝手に子どもを連れ去ってしまう行為は「未成年者略取・誘拐罪」(刑法第224条)に当たる可能性があるので注意が必要です。 -
(2)家での過ごし方に関する注意点
離婚手続中の夫婦が同居している状況は、ささいなきっかけで大きなトラブルが生じるリスクが高いです。たとえば、離婚に関する話し合いがヒートアップした結果、配偶者からDVやモラハラを受ける事態などが想定されます。
このような事態が発生したら、すぐにでも別居して配偶者と距離を置くことが大切です。万が一の事態を想定して、いつでも別居できる準備を整えておくとよいでしょう。
5、離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停を申し立てる場合、弁護士へご依頼いただくことをお勧めいたします。
弁護士は、調停の申し立てに必要な準備から調停当日の対応まで、離婚調停を一貫してサポートします。煩雑な手続きへの対応が不要となるため、精神的なストレスを感じずに済みます。
また、有利な条件での離婚をスムーズに成立させるためにも、弁護士のサポートが非常に効果的です。調停委員に対して、法的な観点から主張の正当性を訴えることで、依頼者に有利な結果をスムーズに得られるように尽力します。
離婚調停の申し立てをご検討中の方は、お早めに弁護士までご相談ください。
6、まとめ
配偶者と同居中でも離婚調停を申し立てることはできますが、万が一トラブルが発生した場合に備えて、いつでも別居できるように準備しておくのがよいでしょう。
有利な条件による離婚をスムーズに成立させたい場合は、弁護士に代理人を依頼することをお勧めいたします。配偶者との離婚をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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