「婚姻を継続し難い重大な事由」とは? 具体例や離婚の注意点を解説
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- 婚姻を継続し難い重大な事由
令和3年(2021年)における鹿児島市の婚姻届出件数は2832件、離婚届出件数は968件でした。
「婚姻を継続し難い重大な事由」は「法定離婚事由」のひとつです。裁判によって離婚する際には、婚姻を継続し難い重大な事由などの法定離婚事由を立証する必要があります。
本コラムでは、「婚姻を継続し難い重大な事由」の具体例や離婚における注意点について、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
1、婚姻を継続し難い重大な事由とは
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは民法で定められた法定離婚事由(離婚原因)の一つであり、婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な状態にあることをいいます。
裁判離婚をする際には、婚姻を継続し難い重大な事由を含む、いずれかの法定離婚事由を立証する必要があります。
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(1)婚姻を継続し難い重大な事由=法定離婚事由のひとつ
離婚訴訟において裁判離婚の判決を得るためには、以下の法定離婚事由のいずれかを立証しなければなりません(民法第770条第1項)。
- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
- ⑤ その他、婚姻を継続し難い重大な事由
婚姻を継続し難い重大な事由を立証できれば、裁判離婚の判決によって、配偶者の同意がなくても強制的に離婚できます。 -
(2)協議離婚・調停離婚であれば法定離婚事由は不要
裁判離婚とは異なり、夫婦の合意によって成立する協議離婚と調停離婚では、その理由を問われません。
したがって、協議離婚と調停離婚については、婚姻を継続し難い重大な事由を含む法定離婚事由が存在しなくても、夫婦の合意がなされたら成立します。
2、婚姻を継続し難い重大な事由に該当し得る例
婚姻を継続し難い重大な事由には、幅広い事情が該当する可能性があります。
以下では、婚姻を継続し難い重大な事由に当たり得る事情の例を解説します。
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(1)暴力(DV)・モラハラ
夫婦の一方が他方に対して社会常識的に見て明らかに行き過ぎた暴力を振るっている場合や、暴力に準ずる精神的な侮辱を繰り返している場合には、夫婦関係を継続させることは被害者にとって酷であるため、婚姻を継続し難い重大な事由が認められやすいといえます。
なお、暴力(DV)やモラハラは、別の法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当する場合もあります。 -
(2)長期間の別居
3年以上の長期間にわたって夫婦が別居している場合は、婚姻関係がすでに破綻しているものとして、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性があります。
どの程度の別居期間が必要であるかは、婚姻期間や未成熟の子の有無など、夫婦に関する具体的な事情によって異なります。 -
(3)性的異常・性交不能
夫婦間の性生活について何らかのトラブルがある場合にも、婚姻を継続し難い重大な事由が認められることがあります。
たとえば、夫婦間で性的指向が異なり、その違いのために夫婦の婚姻関係を維持することが困難である場合には、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性が高いでしょう。
また、夫婦の一方が性的不能により性交渉が継続的に不能であり、今後も性交渉を行うことが期待できない場合にも、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる余地があります。 -
(4)過度な宗教活動
夫婦の一方が、自己の宗教を過度に他方に強いたり、過度に宗教活動へのめり込んで家庭内の不和を招いたような場合も、婚姻を継続し難い重大な事由が認められることがあります。
確かに、夫婦間においても個人の宗教活動が保障されるべきことは当然ですが、その一方で、夫婦は相互の協力によって共同生活を維持していくべき義務を負っているため(民法第752条)、各人の宗教活動にも一定の制限があるためです。 -
(5)重大な犯罪行為
配偶者が重大な犯罪行為をし、他方の配偶者又は家族、親族の名誉に重大な影響を与えた場合にも、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性があります。
とくに、犯罪によって長期間の服役が決定した場合には、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性が高くなります。 -
(6)ギャンブル依存・アルコール依存・薬物依存
配偶者がギャンブル・アルコール・薬物に依存している場合にも、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性があります。
これらの依存は家計に大きな悪影響を与えるほか、DVやモラハラなどのリスクを増大させることから、婚姻を継続させることが酷と考えられるためです。
依存の程度が強ければ強いほど、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性が高まります。
3、婚姻を継続し難い重大な事由に該当しにくい例
以下のような事情があるに過ぎない場合には、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性は低いといえます。
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(1)性格の不一致
「夫婦間の性格の不一致を理由に離婚したい」と考える方は多くおられます。
しかし、性格の不一致は離婚の理由としては抽象的であり、婚姻を継続し難い重大な事由とまではいえないことが多いのです。
DVやモラハラなどの具体的な問題が発生していない限り、性格の不一致を理由に離婚したい場合は、協議離婚や調停離婚を目指すほかないでしょう。 -
(2)一時的な別居
夫婦が別居している場合でも、それが一時的なものにとどまるときは、婚姻を継続し難い重大な事由は認められない可能性が高いといえます。
別居が婚姻を継続し難い重大な事由であると認められるためには、原則として、別居期間が3年以上に及んでいる必要があるのです。 -
(3)配偶者の親族との不和
配偶者の親族と仲が悪いというだけでは、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性は低いといえます。
ただし、配偶者が、自らの親族と他方配偶者との不和のため婚姻関係にまで悪影響が出ている状態を放置しているような場合には、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる可能性があります。
4、配偶者と離婚したい場合の注意点
以下では、配偶者と離婚したい場合には、スムーズに離婚を成立させるために注意すべき点を解説します。
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(1)正当な理由のない別居は避けるべき
夫婦には同居義務があるため(民法第752条)、正当な理由なく別居することは違法となります。
配偶者の同意を得ずに別居すると、悪意の遺棄(民法第770条第1項第2号)などによって有責配偶者とみなされ、離婚請求が認められなくなるおそれがあることに注意してください。
ただし、婚姻関係が破綻している場合や、DVやモラハラの被害を受けている等別居の原因を他方が作っている場合には、別居に正当理由があるとされますので、配偶者の同意を得ることなくただちに別居すべきでしょう。 -
(2)有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない
法定離婚事由を作り出した側を「有責配偶者」といいます。
たとえば不貞行為に及んだ等、婚姻関係の破綻につき専ら又は主として責任のある婚姻当事者は、有責配偶者に当たります。
原則として、有責配偶者による離婚請求は「信義則」に反するという理由から認められません。
別居が相当長期間に及ぶなどの条件を満たせば、例外的に有責配偶者による離婚請求が認められることがありますが、その条件は非常に厳しいものです(最高裁昭和62年9月2日判決)。
とく、離婚成立前に配偶者以外の異性と性交渉をすることは不貞行為に当たり、ご自身が有責配偶者となってしまうおそれがあることに注意してください。
離婚が成立するまでは、法定離婚事由を自ら作り出すような行動は控えましょう。 -
(3)離婚条件を漏れなく取り決めるべき
配偶者と離婚する際には、その後のトラブルを防ぎ、離婚後の関係性を良好に保つため、以下に挙げるような離婚条件について漏れなく取り決めておくことが大切です。
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 婚姻費用
- 親権
- 養育費
- 面会交流の方法
離婚条件を適切に取り決めるためには、弁護士を代理人として協議することをおすすめします。 -
(4)裁判離婚を目指すなら証拠の確保を
配偶者が離婚に同意しない場合は、裁判離婚によって強制的に離婚を目指すほかありません。
裁判離婚の判決を得るためには、法定離婚事由の立証が必要になります。
配偶者の不貞行為や無断での別居、DVやモラハラといった悪質な行為などの証拠を確保しておきましょう。
弁護士に相談すれば、法定離婚事由に関する証拠の確保などについて、状況に応じたアドバイスが受けられます。
5、まとめ
婚姻を継続し難い重大な事由を立証すれば、裁判離婚によって強制的に離婚することが可能です。
具体的には、暴力(DV)やモラハラ、長期間の別居、性的異常・性交不能、過度な宗教活動、重大な犯罪行為、ギャンブル・アルコール・薬物依存などのさまざまな事情が、婚姻を継続し難い重大な事由に当たる可能性があります。
裁判離婚を目指すにあたっては、法定離婚事由の証拠を確保することが大切です。
また、財産分与や親権などの離婚条件についても、過去の裁判例などを踏まえて合理的な主張を行いましょう。
弁護士であれば、裁判離婚の手続きについて全面的にサポートしたり代行したりすることができます。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談をいつでも承っております。
配偶者と離婚したい方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お早めにご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています