育児放棄をする配偶者と離婚したい! 必要な準備や親権の注意点

2026年03月11日
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育児放棄をする配偶者と離婚したい! 必要な準備や親権の注意点

鹿児島市の人口動態調査によると、令和6年、鹿児島市内で932件の離婚が成立しました。

夫婦の離婚には「性格の不一致」や「異性関係」、「家庭内暴力」などさまざまな原因があります。では配偶者の「育児放棄」を理由に離婚することは可能なのでしょうか?

「育児放棄」を理由に離婚する方法やそのために準備すべきこと、親権・養育費などの子どもに関する情報を、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。


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1、「育児放棄」を理由に離婚することはできる?

結論からいうと、夫婦の話し合いで互いに合意すれば、「育児放棄」が理由でも離婚は可能です

しかし、話し合いで合意に至らず裁判に発展するケースは少なくありません。そして裁判で離婚するためには「法定離婚事由」が必要になります。

本章では、そもそも「育児放棄」は何か、「育児放棄」は「法定離婚事由」に該当するかを解説します。

  1. (1)育児放棄とは何か?

    「育児放棄」は児童虐待のひとつです一般には、18歳の成人に満たない年齢の子どもを対象とした行為になります

    育児放棄の具体的な行為をいくつか挙げます。

    【育児放棄の主なケース】
    • 家に1人で長期間放置する
    • 必要な食事を与えない
    • 医療機関を受診させない
    • 学校へ登校させず教育を受けさせない
    • 掃除洗濯をせず不衛生な状態にしている


    育児放棄には、① 消極的ネグレクトと② 積極的ネグレクトの2種類あり、詳細な内容は以下の通りです。

    ① 消極的ネグレクト
    育児に関する知識不足や経済力不足、精神疾患などが原因で結果的に起こってしまう育児放棄のこと

    ② 積極的ネグレクト
    育児に関する知識が十分あり、経済的に余裕もあり、精神疾患などを患っているわけではないのにもかかわらず育児を放棄すること


    育児放棄は消極的ネグレクトと積極的ネグレクトに分けられますが、どちらも「子どもに必要なことをしない状態」ということは共通しています。

  2. (2)育児放棄は法定離婚事由に該当する?

    「法定離婚事由」は、民法770条に定められた法的に認められる離婚原因のことです。以下の5つが定められています。

    以下の「法定離婚事由」のいずれかに当てはまる場合、裁判で離婚が認められます。

    • ① 不貞行為
    • ② 悪意の遺棄
    • ③ 配偶者の生死が3年以上不明
    • ④ 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない(※)
    • ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由

    ※令和6年(2024年)の民法改正により、法定離婚事由のひとつである「強度の精神病」に関する第4号は削除されることとなりました。なお、令和8年(2026年)5月までに施行される予定です。


    「育児放棄」はこの中の② 悪意の遺棄と⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。

    ②の「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助する義務を放棄することです。

    ⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、①から④に該当しなくても婚姻の継続が難しい事由のことをいいます。

    単に、「パートナーが育児をしてくれない」(ワンオペ育児)程度であれば、「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断するとは言い難いですが、たとえば、以下のケースは「悪意の遺棄」あるいは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断され、離婚が認められる可能性があります。

    • 子どもに食事を十分に与えない
    • 子どもが病気になっても必要な医療を受けさせない
    • 子どもを不衛生な環境で生活させる
    • 子どもを風呂にいれないなど不潔な状態で放置する
    • 子どもの意思を無視して子どもを家に閉じ込めたり、子どもだけを残して外出する
    • 乳幼児を車内に放置する


    ただし、法的離婚事由であると認められるためには、育児放棄が行われていることが明確にわかる「証拠」が必要です

2、育児放棄を理由に離婚する方法・進め方

育児放棄を理由に離婚するためには、以下の順で進めていきましょう。

  1. (1)育児放棄の証拠を集める

    育児放棄を理由に離婚したい場合、まずは、育児放棄の事実を裏付ける証拠を集めておくことが大切です

    以下のようなものが、「育児放棄の証拠」になり得ます。

    • 子どもを置いて外出する日時や帰宅時間を記録した日記やメモ
    • 食事を与えない、お風呂に入らせない、掃除洗濯をしないなど育児放棄の様子がわかる写真や動画
    • 育児をするように説得しても拒否された会話の録音やLINE、メールでのやりとり
    • 近所や知り合いからの証言
    • 行政機関への相談履歴
  2. (2)配偶者と話し合う

    証拠を集めたら配偶者と話し合いを行いましょう。

    話し合いで離婚の合意ができれば、「離婚協議書」を作成して協議離婚が成立します。なお、協議書は「公正証書」にすることをおすすめします

    「公正証書」は公証役場で公証人が職務上作成した法的効力のある公的な文書であることから、「離婚協議書」と比べて「証拠力が高い」という特徴があるのです。離婚協議書を自宅に保管しておくと紛失や改ざんされるおそれがありますが、公正証書なら原本を公証役場で20年間保管してもらえます。

    また、公正証書は、裁判で出された判決と同じ効力を持ちますので、相手が公正証書で定めた離婚に際しての合意内容(例えば、養育費、慰謝料、財産分与など)に違反した場合には、この公正証書を用いることで相手に対して強制執行ができます。

    そのため、離婚協議において特に養育費、慰謝料、財産分与などの支払いを受ける側は、離婚条件について「公正証書」を作成しましょう

    離婚協議が決裂した場合は次の「離婚調停」に進みます。

  3. (3)離婚調停

    離婚協議が決裂した場合、家庭裁判所に「離婚調停」の申し立てを行いましょう。

    調停とは、裁判官と調停委員を交えて話し合い、紛争を解決する制度のことです。

    調停委員からのアドバイスを受けることで離婚協議よりも合理的に話し合いを進められる可能性があるでしょう。また、相手と顔を合わせたくない場合は個別に聞き取りを行い、調停を介して話し合いを進めることができます。

    離婚調停で合意に至ると「調停離婚」が成立し、調停調書を作成してもらいます。一方、合意に至らない場合は「審判」か「裁判」を行うことが可能です。

    「審判」は、離婚についておおむね合意に至ったものの、細かな条件が決まらず、裁判所の判断にゆだねる場合に行います。ただし、審判に不服がある場合は申し立て(即時抗告)により結果が覆る可能性も高いため、審判を選択する人は多くありません。

    離婚調停不成立の場合、一般的に行われるのが次に解説する「離婚裁判」です。

  4. (4)離婚裁判

    「離婚裁判」は、当事者の主張や提出された証拠資料などを元に、裁判官が離婚についての判断を下します。ここで育児放棄の事実を裁判官に認めてもらうためにも最初に証拠を集めておくことが重要です。

    離婚裁判の判決が確定すると、不服申し立てはできません。当事者はその判決に従うことになります。

    なお、離婚裁判は「調停前置主義」といって、調停をとばして行うことができない決まりがあります。そのため、まずは「離婚調停」の申し立てを行うようにしましょう。

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3、親権を取得するために注意したいこと

育児放棄を理由に離婚をする場合、「親権」を取得したいと考える方も多いでしょう。そこで、親権を取得するためのポイントを解説していきます。

  1. (1)裁判所の判断基準をおさえる

    親権争いが裁判に発展した場合、親権を取得するためには裁判所の判断基準を知っておく必要があります

    親権獲得のために、おさえておくべき判断基準は以下の3つです。

    • ① きょうだい不分離の原則
    • ② 監護・養育の実績(継続性の原則)
    • ③ 子どもの意思の尊重


    3つの判断基準を詳しくみていきましょう。

    ① きょうだい不分離の原則
    子どもが2人以上いる場合、きょうだいを分離することは、父母との別れに加え、きょうだいとの別れも経験させることになり、一般的には好ましくないとされます。そこで、きょうだいは分離せず同一親権者の下で養育する方が望ましいという原則が「きょうだい不分離の原則」です。

    ② 監護・養育の実績(継続性の原則)
    裁判所は子どもの生活環境の安定性・継続性を重視します。そのため、それまで監護・養育を主に行ってきた親に親権が認められる可能性が高いでしょう。

    ただし、違法な奪取で始まった監護は、その後の実績が積み重なっても原則評価されません。

    ③ 子どもの意思の尊重
    「どちらの親と暮らすか」という選択肢において、子どもの意思は尊重されるべきですが、すべての子どもの意思を尊重するわけにはいきません。まだ小さく、意思表示ができない場合や判断能力に欠ける場合があるからです。

    そのため、裁判所では「15歳」から子どもの意思が尊重されます。ただし、15歳に満たない10歳前後の場合であっても、「判断能力がある」と判断されれば意思を尊重してもらえる可能性もあるでしょう。

    以上3つが裁判所で親権者を決める際の判断基準です。ただし、これらの基準の大元になるのは「子の福祉」、つまり子どもにとってどちらが親権者になる方が子の利益となるかという観点です。

    裁判官に「自分が親権者の方が子どもにとって利益となる」という主張を認めてもらうためには、上記3つの判断基準に照らした「子の福祉」の主張をすることが重要になります

  2. (2)証拠を用意する

    親権を獲得するためには、「配偶者が育児放棄をしている証拠(2章で前述)」に加えて「自分が育児を積極的に行っている証拠」を用意する方がいいでしょう。

    育児を行っている証拠の例は、以下の通りです。

    • 子どもの成長や自分がしていることを書いた育児日記
    • 子どもを遊びに連れて行っている時の子どもと自分が写っている写真
    • 自分が書いていることがわかる保育園や幼稚園、学校の連絡帳


    配偶者の育児放棄の証拠と合わせて自分の育児の実績の証拠を用意することで、親権者に認められる可能性が高くなります

4、育児放棄で離婚する前に準備しておきたいこと

離婚をするためには事前準備が重要です。準備を怠ると、不利な条件で離婚が成立したり、スムーズに新生活を送れなかったりするリスクがあります。

そこで、育児放棄で離婚をする前に準備するべきことや知っておきたいことをご紹介します。

  1. (1)証拠を集める

    2章3章でも前述しましたが、離婚協議で揉める場合や裁判に発展する場合を念頭に置いて、育児放棄の証拠や自分の育児実績証拠を集めておきましょう

  2. (2)離婚後の生活費のめどを立てる

    婚姻中、パート勤務や専業主婦・専業主夫をしていた場合は、離婚条件次第で配偶者から慰謝料や養育費を受け取れる場合もあります。しかし、それだけで離婚後生活を続けることは難しいでしょう。

    そのため働き方を変えたり仕事を探したりして離婚後の生活費のめどを立てておくことが大切です

  3. (3)離婚後の住居を決めておく

    子どもの親権者になった場合は、子どもへの影響を踏まえて今の家にそのまま住むのか、出ていく場合の新しい住居はどうするのか考える必要があります。

    たとえば、幼稚園や小学校に通っている場合、「そのまま通わせるために今の家に住む」のか「通える距離の住居を確保する」、もしくは「転園・転校を念頭に住居を確保する」など考えて準備しましょう。

  4. (4)離婚条件を決めておく

    子どもの親権以外にも決めなければならない離婚条件があります。具体的には以下の内容です。

    • ① 面会交流
    • ② 養育費
    • ③ 慰謝料
    • ④ 財産分与


    それぞれ解説していきます。

    ① 面会交流
    子どもと離れて暮らす親が、子どもと定期的に面会や交流することを「面会交流」といいます。面会交流について決める必要があるのは以下の内容です。

    • 面会交流の頻度や時間、場所をどうするのか
    • 面会交流の方法は電話やメール、手紙など間接的に行うのか直接会うのか


    ② 養育費
    生活費や教育費、医療費など「子どもの監護・教育のために必要な費用」である養育費について、以下の内容をなるべく詳細に決める必要があります。

    • 支払いの期間(離婚後から大学卒業までなど)
    • 金額
    • 支払い時期
    • 振込先口座


    ③ 慰謝料
    相手の不貞行為や暴力、悪意の遺棄などの不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金が「慰謝料」です。

    配偶者の育児放棄が原因で離婚をすることになった場合は慰謝料を請求できる可能性もあります。適切な金額の慰謝料を請求するためには、弁護士に相談して進めるとよいでしょう

    ④ 財産分与
    「財産分与」は婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産を離婚時に分けることをいいます。原則、夫婦で半分にします。財産分与の対象となる主な財産(共有財産)は以下の通りです。

    • 現金や預貯金
    • 自動車
    • 家や土地などの不動産
    • 退職金
    • 生命保険
    • 株式


    以上、これら4つの離婚条件の話し合いは、もめる可能性が高くなります。不利な条件にならないよう、弁護士に相談して事前にアドバイスを受けておくのが得策といえます

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5、まとめ

育児放棄で離婚を進める場合は、育児放棄の証拠を集めることが大切です。

また、親権を獲得したい場合や離婚をスムーズに進めたい場合は弁護士に相談をし、具体的なアドバイスを得たり、相手との交渉を任せたりすることも重要です。

育児放棄により、離婚を進めたいとお考えの場合は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士にご相談ください。離婚トラブルの解決実績のある弁護士が状況をお伺いの上、解決に向けてサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています