年金分割調停とは? 調停の流れと手続き方法
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2022年の鹿児島市の婚姻件数は2832件、離婚件数は968件でした。離婚の際、遺産分割や慰謝料請求など、金銭的な問題はなかなか話し合いが進まず合意が得られないことも珍しくありません。
こうした離婚時の金銭問題のひとつに「年金分割」があります。すでに離婚した元夫婦の間で、年金分割に関する合意が成立しない場合は、家庭裁判所に「年金分割調停」を申し立てることが考えられます。
今回は年金分割調停の申立て方法・手続き・弁護士に依頼するメリットなどを、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
1、年金分割調停とは?
すでに離婚した元夫婦の間で、年金分割についての話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に「年金分割調停」を申し立てましょう。
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(1)年金分割とは
「年金分割」とは、婚姻期間中の厚生年金保険(共済年金を含む)の加入記録を、夫婦間で分割することをいいます。
将来受給できる老齢厚生年金は、納付した厚生年金保険料の金額に応じて決まります。つまり婚姻期間中の厚生年金保険の加入記録は、将来における年金受給権の基礎となるため、財産権としての性質を有します。
年金分割は、将来の年金受給権に関する財産分与(民法第768条)であると位置付けられています。 -
(2)年金分割調停の目的
年金分割の手続きには、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
① 合意分割
(元)夫婦の合意によって年金分割の割合を取り決めます。
② 3号分割
婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者だった期間がある場合、年金事務所等で手続きを行えば、単独で年金分割を請求できます。3号分割の場合、年金分割の割合は自動的に半分ずつとなります。
合意分割の話し合いがまとまらない場合に、調停委員の仲介によって合意を目指す手続きが「年金分割調停」です。
年金分割調停では、中立な立場にある調停委員が元夫婦それぞれの主張を公平に聞き取り、歩み寄りを促して合意形成を目指します。調停委員を介することで、冷静な状態で話し合いをしやすくなる点が年金分割調停のメリットです。 -
(3)年金分割調停と離婚調停の使い分け
年金分割調停は、すでに離婚した元夫婦の間で年金分割の方法を取り決めるための手続きです。
これに対して、まだ離婚していない夫婦が年金分割の方法を話し合う場合は、離婚調停の手続きによります。 -
(4)年金分割調停と審判は選択可能
すでに離婚した元夫婦が年金分割の方法を取り決める際には、年金分割調停だけでなく、年金分割審判を申し立てることもできます。
調停は話し合いにより合意を目指す手続きですが、審判は家庭裁判所が年金分割の割合を決定する手続きです。話し合いによる合意が難しいと思われる場合には、年金分割調停ではなく、年金分割審判を申し立てることも検討しましょう。
2、年金分割調停を申し立てる方法
年金分割調停を申し立てる方法について、以下の事項を解説します。
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(1)年金分割調停の申立てができる人
年金分割調停を申し立てることができるのは、離婚した元夫または元妻です。前述のとおり、まだ離婚していない場合は年金分割調停ではなく、離婚調停によって年金分割の割合を話し合います。
なお、法律上の婚姻関係になくても、内縁関係(事実婚)が成立していた場合には、年金分割調停を申し立てることができます。 -
(2)年金分割調停の申立先
年金分割調停の申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所か、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。
調停期日への出頭が求められるため、原則として相手方の住所地の家庭裁判所が申立先とされています。
これに対して年金分割審判は、申立人の住所地の家庭裁判所にも申し立てることができます。年金分割審判は原則として書面審理のみによって行われ、相手方が家庭裁判所に出頭する必要はないためです。 -
(3)年金分割調停の申立書類
年金分割調停の申立てに必要な書類は、以下のとおりです。
- 申立書およびその写し1通
- 年金分割のための情報通知書(原本)
申立書の書式と記載例は、裁判所のウェブサイトに掲載されています。
また、「年金分割のための情報通知書(年金分割情報通知書)」は、最寄りの年金事務所等で取得することができます。
上記のほか、審理のために必要な場合は、家庭裁判所から追加書類の提出を依頼される場合があります。 -
(4)年金分割調停の申立費用
年金分割調停の申立てに必要な費用は、以下のとおりです。
- 収入印:1200円分
- 連絡用の郵便切手:数百円分程度
年金分割審判を申し立てる際には、上記に加えて、確定証明申請手数料として収入印紙150円分が必要となります。
3、年金分割調停を申し立てた後の手続き
年金分割調停を申し立てた後は、以下の流れで手続きが進行します。
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(1)調停期日の指定
年金分割調停の申立てを受理した家庭裁判所は、調停期日を指定して当事者に連絡します。
指定された期日の都合が悪い場合は変更してもらえますので、出席できないことがわかった段階でその旨を家庭裁判所に連絡しましょう。 -
(2)調停期日|調停委員との面談・調整
調停期日は、最初に手続きの説明がなされた後、当事者が交互に調停室へ入室し、調停委員と面談する形で進行します。
1回の調停期日はおおむね2時間程度で、30分程度の面談を元夫・元妻それぞれ2回ずつ行うのが一般的です。
調停委員は中立的な立場で、当事者双方の主張を公平に聞き取ります。その上で、必要に応じて各当事者に譲歩を促し、年金分割割合に関する合意を目指します。 -
(3)調停成立|調停調書の作成
当事者双方が年金分割割合に合意した場合には、調停成立として調停調書が作成されます。
調停調書の謄本または抄本を年金事務所等に提出すれば、単独で合意分割の手続きを行うことが可能です。 -
(4)調停不成立|審判により年金分割の割合を決定
年金分割割合に関する合意が成立する見込みがない場合、調停は不成立となります。
この場合、家庭裁判所は当事者から提出された資料や主張内容などを総合的に検討し、年金分割割合を決定する審判を行います。審判の内容は、家庭裁判所が作成する審判書に明記されます(家事事件手続法第76条)。
審判に対しては、告知日から2週間以内に限り即時抗告が認められます(同法第74条第4項、第5項、第86条第1項)。即時抗告期間が経過すると、審判が確定します。
審判の確定後、審判書の謄本または抄本と確定証明書を年金事務所等に提出すれば、単独で合意分割の手続きを行うことが可能です。
4、年金分割調停を弁護士に依頼するメリット
年金分割調停を申し立てる際には、弁護士へ依頼することをおすすめします。
年金分割調停を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
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(1)適切な割合による年金分割を受けられる
適切な割合による年金分割を受けるためには、年金の加入記録に関する資料をきちんとそろえて提出することに加えて、相手方の理不尽な主張に屈せず反論することが大切です。
弁護士にご依頼いただければ、筋道のとおらない相手方の主張を受け入れることなく、依頼者の権利をしっかり主張し、適切な割合による年金分割を受けられるようにサポートいたします。 -
(2)調停期日へ代わりに出席してもらえる
年金分割調停は、年金分割に争点が絞られており、当事者間で話し合うべき事柄も多くありません。そのため、弁護士に依頼すれば、出席せずに、当日の対応は弁護士に一任することも可能です。
調停期日に出席する時間や労力を割くことなく、スムーズに年金分割を受けたいとお考えの方は、弁護士への依頼をおすすめします。
5、まとめ
離婚後の年金分割に関する話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に年金分割調停または年金分割審判を申し立てましょう。
調停が成立し、または家庭裁判所による審判が確定すれば、年金事務所等で合意分割の手続きを行うことができます。
適切な割合により年金分割を受けるには、厚生年金保険の加入記録に関する資料をきちんとそろえて提出すること、およびご自身の法的な権利をきちんと主張することが大切です。
ベリーベスト法律事務所の弁護士にご依頼いただければ、元配偶者の理不尽な主張に屈することなく、お客さまが適切に年金分割を受けられるようにサポートいたします。
年金分割制度についてわからないことがある方、適切な割合で年金分割を受けたいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスにご相談ください。
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