チケット詐欺とは? 被害に遭ったらどのように対処するべきか

2022年11月30日
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チケット詐欺とは? 被害に遭ったらどのように対処するべきか

2021年度に鹿児島市の消費生活センターに寄せられた相談は3799件でした。

入手困難なコンサートチケットなどを売ってあげるとウソをつき、金銭をだまし取る「チケット詐欺」が横行しており、こうした相談も消費者センターに寄せられていることが推測されます。特にSNS経由でチケットを取引しようとする場合は、チケット転売による詐欺被害に遭わないように十分ご注意ください。

今回はチケット詐欺について、成立する犯罪・返金の可能性・被害を回避するために気を付けるべきことなどを、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和3年度の消費生活相談統計」(鹿児島市)

1、チケット詐欺とは? よくある手口を紹介

「チケット詐欺」とは、入手困難なコンサートチケットなどを売ってあげるとウソをつき、金銭をだまし取る行為です。

特に最近では、SNSに関連する消費者被害の相談件数が増えています。国民生活センターの資料によれば、SNSに関連する相談件数は、2016年には1万3564件であったのに対して、2020年には4万4382件と、わずか4年で3倍以上に増えている状況です。
(出典:「SNSをきっかけとした消費者トラブルにあわないために」(国民生活センター相談情報部))

チケット詐欺も、多くの消費者被害と同様、主にSNSを通じて行われています。
チケット詐欺のよくある手口は、以下のとおりです。

  1. (1)入金してもチケットが送られてこない

    チケット代金を入金しても一向にチケットが送られてこないケースは、チケット詐欺の典型例です。

    売主に問い合わせを行っても、入金以降は全く連絡がつかなくなり、行方がつかめなくなってしまうケースがよくあります。

  2. (2)偽物のチケットが送られてくる

    売主からチケットらしきものが送られてくるものの、本物のチケットではなく偽物というケースもよくあります。

    偽物のチケットが精巧に作られている場合、購入者がそれを偽物だと見抜くことは容易ではありません。実際に会場に足を運んだ際に、入場を拒否されて初めて偽物と気づくケースも多いでしょう。

    購入者としては、正規のチケットを購入する機会を失うとともに、会場への無駄足を強いられることになります。また、売主が逃亡するための時間稼ぎにもなり得るため、偽物のチケットを送り付ける行為はきわめて悪質です。

2、チケット詐欺は「詐欺罪」

正規のチケットを渡すつもりがないにもかかわらず、購入者にチケット代金を支払わせる行為は「詐欺罪」に当たります。

  1. (1)詐欺罪の成立要件

    詐欺罪は、以下の要件をすべて満たす行為について成立します。

    • ① 他人を欺いたこと(欺罔行為)
    • ② 欺罔行為によって被害者がだまされ、錯誤に陥ったこと
    • ③ 被害者が欺罔行為による錯誤に基づき、犯人または第三者に財物を交付したこと


    チケット詐欺は、「正規のチケットを渡す」とウソをついて被害者をだまし、だまされた被害者が犯人または「受け子」に代金を交付するという内容です。
    犯人による一連の行為は、上記の詐欺罪の成立要件をすべて満たします

  2. (2)詐欺罪の法定刑

    詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
    実際の量刑は、主に被害額や被害者の多さなどによって決まります。

    チケット詐欺の場合、1人当たりの被害額は数千円程度と比較的少額の場合が多いです。
    しかし、きわめて多数の被害者がいる場合には、被害総額が高額となり、実刑を含めた重い刑事罰が科されるケースもあります

  3. (3)チケット詐欺で逮捕された事例

    実際に、チケット詐欺を行った者が逮捕される事例も報告されています。

    2020年6月17日、福岡県警はチケット詐欺の容疑で、18歳無職の少女を逮捕しました。報道によると、少女は人気グループのコンサートチケットを譲ると偽り、専門学生の少女(当時19歳)からチケット代金をだまし取ったとのことです。

    さらに、少女の口座には100件目前後の個人名義による振り込みが確認されていることから、同一手口による余罪があると疑われます。

    犯行当時は18歳であることから、少年法の適用対象となり、少年事件として家庭裁判所の保護処分が行われた可能性が高いです。これが成人による詐欺事件であれば、被害額や被害者の数によっては実刑判決を受けることも考えられるでしょう。

3、チケット詐欺に遭った場合、返金を受けることは困難

チケット詐欺の被害に遭った場合、支払った代金を返してもらうことは困難と言わざるを得ません。

  1. (1)犯人の身元がわからないことが多い

    SNSを中心に行われているチケット詐欺では、犯人が匿名アカウントを使用しており、身元が分からないケースが非常に多いです。

    匿名アカウントの身元を特定するには、弁護士を通じて発信者情報開示請求を行う方法などが考えられます。しかしチケット詐欺のように、被害が少額の場合は費用倒れになってしまうでしょう

  2. (2)犯人が資金を持っていないことが多い

    チケット詐欺の犯人は、代金が入金されたらすぐに資金を使い込んだり、第三者に流出させたりして、無資力となってしまうケースがよくあります。

    犯人の身元を突き止めたとしても、すでに犯人は資金を持っておらず、結局チケット代金は回収できない可能性が高いです。

  3. (3)少しでも返金の可能性を高めるには?

    チケット詐欺の犯人から返金を受けられる可能性を少しでも高めるには、詐欺の証拠を基にして、一刻も早く犯人の身元を突き止める必要があります。

    特に、複数の人が同じ被害に遭っている場合は、警察がすでに捜査へ着手している可能性があります。警察が迅速に犯人を逮捕すれば、返金を受けられる可能性が高まるでしょう。

    もしチケット詐欺の被害に遭った場合は、速やかに警察へ被害届を提出してください

4、チケット詐欺に遭わないために気を付けるべきこと

チケット詐欺の被害に遭ったら返金は困難であることを考えると、被害に遭わないように自衛を行うことが何よりも大切です。

コンサートチケットなどを入手しようとする方は、以下の各点を念頭に置いて、チケット詐欺の被害に遭わないよう十分ご注意ください。

  1. (1)相手が信頼できる人かどうかを確認する

    チケットを譲ってくれるという人が現れたとしても、その人が信頼に足る人物かどうかは慎重に確認しなければなりません。

    古くから人柄を知っている人であれば、それなりに信頼しても大丈夫かもしれません。ただし、支払い方法や金額などをよく聞いて、不審な点がないかチェックすることは大切です。

    これに対して、SNSの匿名アカウントを通じてチケットの購入を持ち掛けてくる人を、軽率に信用するのは非常に危険です。どうしてもチケットを入手したいという気持ちはわかりますが、匿名アカウント経由の購入は避けた方が無難でしょう。

  2. (2)先払いの場合は十分に警戒する

    売主から、銀行振込や決済アプリなどを用いたチケット代金の先払いを求められている場合は、チケット詐欺を警戒しなければなりません。
    代金を持ち逃げされるおそれがあるからです。

    チケット代金の受け渡し方法としては、対面でチケットの現物と引き換えることが望ましいです。対面での受け渡しを拒否する人からチケットを購入することは、基本的に避けるべきでしょう。

  3. (3)チケット詐欺被害に遭っている人がいないかを調べる

    人気グループのコンサートチケットなどについては、チケット詐欺が横行しているケースが非常に多いです。
    希少性の高いチケットをどうしても欲しいというファン心理を悪用して、詐欺グループが組織的にチケット詐欺を働くケースがよくあります。

    入手困難なチケットを正規ルート以外で購入する際には、そのチケットを購入するに当たって詐欺被害に遭っている人がいないかどうか、SNSの検索機能などを用いて確認することをお勧めいたします。

  4. (4)販売価格を確認する|定価を超える転売は違法の可能性大

    チケット不正転売禁止法※では、国内で開催されるコンサートやスポーツイベントなどのチケットにつき、興行主等の設定する価格を上回る価格で転売する行為を禁止しています。
    (※正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)

    したがって、国内イベントのチケットを購入しようとする際、販売価格が興行主等の設定する価格を超えていれば違法であり、その売主はチケット詐欺業者である可能性が高いです。正規ルート以外で転売チケットを購入する場合は、販売価格が適正かどうかを必ず確認しましょう。

5、まとめ

チケット詐欺の被害に遭った場合、犯人から返金を受けることは困難です。正規ルート以外でチケットを購入しようとする場合は、チケット詐欺の被害に遭わないように十分ご注意ください。

チケット詐欺の被害については、警察や地域の消費生活センターが相談を受け付けています。怪しい人からチケットの販売を持ちかけられた場合や、チケット詐欺の被害に遭ってしまった場合には、すぐに警察や消費生活センターの窓口へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています