「不法行為による損害賠償請求」や「債務不履行」について解説

2023年09月26日
  • 損害賠償請求
  • 損害賠償
  • 不法行為
「不法行為による損害賠償請求」や「債務不履行」について解説

他人の行為によって損害を被った場合には、不法行為または債務不履行に基づく損害賠償を請求することができます。

損害賠償請求を行う際には、法律の専門家である弁護士のサポートを受けましょう。

今回は不法行為・債務不履行に基づく損害賠償請求の概要や手続きの流れなどについてベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

1、損害賠償請求とは

損害賠償請求とは、他人の行為または不作為によって受けた損害について、その相手に対して賠償を請求することをいいます

  1. (1)損害賠償請求の法的根拠

    損害賠償請求の法的根拠は、主に「不法行為」と「債務不履行」の二つです。

    ① 不法行為(民法第709条)
    故意または過失により、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、損害を発生させた場合に成立します。

    ② 債務不履行(民法第415条)
    契約に基づく債務について、債務者の責に帰すべき事由によって、債務の本旨に従った履行ができなかった場合又は履行が不能な場合に成立します。


    そのほか、不法行為責任の派生形として、以下の責任を根拠とする損害賠償請求も認められています。

    • 責任無能力者の監督義務者等の責任(民法第714条)
    • 使用者責任(民法第715条)
    • 工作物責任(民法第717条)
    • 動物の占有者等の責任(民法第718条)
    • 共同不法行為者の責任(民法第719条)
    • 製造物責任(製造物責任法第3条)
    • 人身交通事故における運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)
    など


    以下では、一般的な不法行為および債務不履行に基づく損害賠償請求を中心に解説していきます。

  2. (2)損害賠償請求の範囲

    損害賠償請求が認められるのは、被害者が受けた損害のうち、以下の要件を満たすものです

    ① 不法行為
    不法行為との間に条件関係(「あれなければこれなし」の関係)が認められ、かつ不法行為によって生じることが社会通念上相当と評価できる損害

    ② 債務不履行
    以下のいずれかに該当する損害(民法第416条)
    1. (a)債務不履行によって通常生ずべき損害
    2. (b)債務不履行に伴い、特別の事情によって生じた損害のうち、債務者がその事情を予見すべきであったもの

2、損害賠償請求をするために必要な対応

不法行為または債務不履行に基づいて加害者(債務者)に対して損害賠償を請求する際には、以下のポイントを押さえた対応を行うことが大切です。



  1. (1)要件事実に対応した証拠を集める

    損害賠償請求は、最終的には裁判所における訴訟によって争われることになります。

    訴訟では、損害賠償を請求する側(=原告)が選択する法律構成(不法行為・債務不履行など)に応じて、その要件事実を立証しなければいけません
    要件事実を立証するためには、それぞれに対応した証拠を集める必要があります。

    以下の法律要件をふまえたうえで、できる限り豊富に証拠を集めましょう。

    <不法行為の要件>
    • ① 被害者の権利又は法律上保護される利益の存在
    • ② 加害者が(①)を侵害したこと
    • ③(②)についての加害者の故意又は過失
    • ④ 損害の発生及び額
    • ⑤(②)と(④)との因果関係
    • ⑥(②)が違法であること((②)だけでは違法性が明らかでない場合)

    <債務不履行の要件>
    • ① 債務の存在(契約内容から立証する)
    • ②(①)の債務の不履行
    • ③ 債権者に損害が生じたこと及びその額
    • ④(②)と(③)との因果関係
    • ⑤ 特別事情を債務者が予見した又は予見することができたこと(特別損害の場合)

    ※債務者は、債務不履行が債務者の責に帰することができない事由によるものであることを立証すると、免責される
  2. (2)要件に沿った法的主張を行う

    損害賠償請求の証拠を集めたら、その証拠を適切に引用しながら、上記の法律要件に沿った主張を組み立てる必要があります。

    とくに訴訟を通じて損害賠償を請求する場合には、原告には損害賠償請求権に関する厳密な主張や立証が要求されます。
    主張や立証に甘い部分があると、敗訴の可能性が高まってしまう点に注意しましょう

    法律要件に沿って厳密な主張や立証を組み立てるためには法律の専門知識が必要になるため、一般の方には困難です。
    訴訟にまで発展する可能性がある場合には、早い段階から弁護士に依頼しましょう

  3. (3)状況に応じた手続きを選択する

    損害賠償請求の手続きとしては、主に示談交渉と訴訟の二種類が存在します。

    示談交渉は、加害者(債務者)との間で直接行う手続きです
    加害者(債務者)側が示談に応じれば、早期にトラブルを解決できる点がメリットです。その一方で、双方の主張が大きくかけ離れている場合には、示談成立は見込めないというデメリットがあります。

    訴訟は、裁判所の公開法廷において行います
    示談交渉がまとまらない場合でも、訴訟を提起すれば、損害賠償請求に関するトラブルを解決することができます。
    ただし、損害賠償を請求する側には厳密な主張や立証が求められるほか、手続きが長期化しやすい点もデメリットといえるでしょう。

    示談交渉と訴訟は、証拠の状況や加害者(債務者)側の反応をふまえて使い分けるべきです
    証拠が不十分な場合や、加害者(債務者)側が示談に応じる姿勢を見せている場合には、示談交渉を通じた解決を図ることが望ましいといえます。
    これに対して、証拠が十分にそろっていて、加害者(債務者)側との間で主張内容が乖離(かいり)している場合には、示談交渉に時間を費やすのではなく、訴訟を通じた請求を行うのが適切です。
    弁護士のアドバイスを受けながら、状況に合わせた適切な手続きを選択しましょう。

3、損害賠償請求の手続きの流れ

以下では、示談交渉と訴訟のそれぞれについて、損害賠償を請求する手続きの流れを解説します。

  1. (1)示談交渉の流れ

    損害賠償請求の示談交渉を行う際には、まず適宜の方法によって加害者(債権者)と連絡を取る必要があります

    消滅時効の完成が迫っている場合には、内容証明郵便によって請求書を送付しましょう。内容証明郵便による催告には、消滅時効の完成を6か月間猶予する効果があります(民法第150条第1項)。
    不法行為・債務不履行に基づく各損害賠償請求権の消滅時効期間は、以下の通りです。

    ① 不法行為
    (a)人の生命または身体を害する不法行為の場合
    以下のいずれか早く経過する期間(民法第724条、第724条の2)
    • 被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から5年
    • 不法行為の時から20年
    (b)(a)以外の不法行為の場合
    以下のいずれか早く経過する期間(民法第724条)
    • 被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年
    • 不法行為の時から20年

    ② 債務不履行
    以下のいずれか早く経過する期間(民法第166条第1項)
    • 権利を行使できることを知った時から5年
    • 権利を行使できる時から10年


    示談交渉では、両当事者が互いの主張を提示し合いながら、適宜譲歩をして合意形成を目指します
    解決案について合意できたら、その内容をまとめた合意書を締結したうえで、合意書に沿って損害賠償の精算を行いましょう。

  2. (2)損害賠償請求訴訟の流れ

    損害賠償請求訴訟を提起する際には、裁判所に訴状を提出します(民事訴訟法第134条第1項)
    訴状には、裁判所に対して求める判決の内容(=請求の趣旨)や、その根拠となる事実(=請求の原因)などを記載しましょう(民事訴訟法第134条第2項)。
    また、訴状とあわせて証拠資料なども提出します。

    被告側からは答弁書が提出され、公開法廷における口頭弁論期日が始まります
    以降は、必要に応じて争点整理期日を挟みながら、口頭弁論期日において主張・立証を相互に展開していきます。

    審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。
    判決に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起できます(民事訴訟法第285条)。
    控訴審判決に対しては上告も可能ですが、上告が受理されるケースは限定的です。

    控訴・上告の手続きを経て、訴訟の判決が確定します。
    損害賠償を命じる判決確定後、被害者(債権者)は加害者(債務者)の財産について強制執行の申立てが可能となります(民事執行法第22条第1号)。

4、損害賠償請求の示談交渉・訴訟などは弁護士へ相談を

損害賠償請求を成功させるためには、示談交渉や訴訟などの手続きにおいて、法的根拠に則った主張や立証を行うことが大切です。

弁護士は、加害者(債務者)側の損害賠償責任を裏付けるための証拠収集や、示談交渉・訴訟手続きの代行などを通じて、適正額の損害賠償をスムーズに得られるようにサポートすることができます
不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求を検討されている方は、お早めに、弁護士までご相談ください。

5、まとめ

他人の行為によって損害を受けた場合には、不法行為または債務不履行に基づく損害賠償を請求することが考えられます。

損害賠償請求にあたっては、不法行為または債務不履行の成立要件につき、証拠に基づく主張や立証が求められます。
法律的に説得力のある主張を組み立てるためには、弁護士のアドバイスを受けることがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、損害賠償請求に関するご相談を承っております。
ご依頼いただければ、不法行為や債務不履行によって依頼者が被った損害を、十分かつ早期に回復できるようにサポートいたします。
また、訴訟を集中的に取り扱う弁護士も在籍しているため、損害賠償請求訴訟の準備や対応を一括して任せていただけます。

近隣トラブルや契約トラブルなどに巻き込まれて、相手方に対する損害賠償請求を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています