他人の土地に勝手に入ると何罪になる?

2022年05月26日
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他人の土地に勝手に入ると何罪になる?

鹿児島県警察のデータによると、2021年中に鹿児島県内で認知された刑法犯の総数は4641件で、前年に比べて472件減少しました。そのうち、窃盗犯が3201件と全体の69.0%を占めており、以下粗暴犯が362件(7.8%)、知能犯が149件(3.2%)、風俗犯が53件(1.1%)、凶悪犯が37件(0.8%)となっています。

もっとも多いのが窃盗犯ですが、他人の土地に勝手に入る「住居侵入罪」と、同時に実行され、罪の責任を問われるケースは珍しくありません。窃盗と比べると罪が軽いイメージの住居侵入ですが、刑事上の罪と併せて被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任も負う可能性もあります。

また、近年ではスマートフォンの位置情報ゲームで、アイテムを取得できるエリアに他人の私有地が指定されることもありますが、所有者に無断で敷地に侵入することは絶対にやめましょう。今回は、他人の土地に勝手に入る行為について成立する、犯罪その他の法律上の責任について、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「令和3年中の犯罪の概況」(鹿児島県警察))

1、他人の土地に勝手に入ると「住居侵入罪」に問われる可能性あり

他人の土地に勝手に入ってしまうと、通報されて「住居侵入罪」で警察に逮捕されてしまう可能性があります。

  1. (1)住居侵入罪の成立要件

    住居侵入罪は、以下の3つの要件をすべて満たすと成立します(刑法第130条)。

    ① 他人の住居に侵入したこと
    他人が日常生活に利用する場所(=住居)に、管理権者(所有権者など)の意思に反して侵入したことが要件となります。
    管理権者が拒絶の意思を積極的に明示していなくても、住居の性質・使用目的・管理状況・管理権者の態度・立ち入りの目的などに鑑みて、立ち入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断される場合は「侵入」に該当します(最高裁昭和58年4月8日判決)。

    ② 住居への侵入について正当な理由がないこと
    暴行から逃れるためなど、住居侵入の違法性を阻却する事由(=正当な理由)がある場合は、住居侵入罪は不成立となります。

    ③ 住居侵入の故意があること
    「他人の住居に侵入する」ということを、少なくとも未必的に認識・認容していたことが要件となります。
  2. (2)住居以外の土地・建物に侵入した場合にも「住居侵入罪」が成立する

    他人が所有する「住居」(日常生活に利用する場所)以外の場所に侵入した場合にも、住居侵入罪が成立します。

    「住居」以外に住居侵入罪の客体となっているのは、邸宅・建造物・艦船です。

    ① 邸宅
    居住用建造物で、住居以外のものを意味します。
    (例)居住者のいない空き家、閉鎖中の別荘など

    ② 建造物
    住居、邸宅以外の建物全般を意味します。

    ③ 艦船
    軍艦および船舶を意味します。


    住居・邸宅・建造物の3つで、他人が所有する建物やその敷地はほぼすべてカバーされます。
    したがって、建物が建っている他人の土地へ勝手に入った場合、住居侵入罪が成立すると理解しておきましょう

  3. (3)空き地への侵入には住居侵入罪は成立しない

    建物が建っている場合とは異なり、他人が所有する空き地へ立ち入る行為は、刑法上の犯罪とはされていません。空き地への侵入は、建物が建っている土地への侵入に比べて、プライバシー侵害の程度が低いと考えられるためです。

    なお、建物が建っていない駐車場などへの侵入についても、同様に犯罪は成立しません。

    ただし、住居侵入罪が成立しないとしても、後述する不法行為については、空き地への侵入にも成立する可能性がある点に注意しましょう。

2、住居侵入罪に問われた場合、科される刑罰は?

住居侵入罪によって起訴され、刑事裁判で有罪判決が確定した場合、刑罰が科されてしまいます。住居侵入罪の法定刑と、量刑を左右する要素を確認しておきましょう。

  1. (1)住居侵入罪の法定刑

    住居侵入罪の法定刑は、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。

    罪状によっては、懲役刑を含む厳しい処分も想定しておかなければなりません。

  2. (2)住居侵入罪の量刑を左右する要素

    住居侵入罪の具体的な量刑は、犯罪事実に関する情状(犯情事実)と、それ以外の一般情状事実に基づいて決定されます。

    住居侵入罪の量刑を左右する主な要素は、以下のとおりです。

    <犯情事実>
    • 侵入の態様(鍵を開けたり、設備を壊したりした場合は悪質と判断される)
    • 被害者に与えた損害の大きさ
    • 犯行の動機
    • 計画性の有無
    • 常習性の有無
    など

    <一般情状事実>
    • 被害者との示談の成否
    • 被害者の処罰感情の程度
    • 反省の程度
    • 前科の有無
    • 社会的制裁を受けたかどうか
    など

3、他人の土地に勝手に入ると「不法行為」も成立する

他人の土地に勝手に入った場合、住居侵入罪が成立することに加えて、「不法行為」(民法第709条)も成立する可能性があります
不法行為が成立する場合、加害者は被害者に対して損害賠償を行わなければなりません。

  1. (1)不法行為の成立要件

    民法上の不法行為は、以下の要件をすべて満たす場合に成立します。

    ① 加害者に故意または過失があること
    他人の土地へ意図的に侵入したか、または侵入してはいけない他人の土地であることについて知ることできたと認められることが要件となります。

    ② 加害者の行為が違法であること
    住居侵入について正当な理由がなければ、加害者の行為は違法と判断されます。

    ③ 当該行為によって被害者に損害を与えたこと
    被害者に何らかの具体的な損害が発生していることが要件となります。
  2. (2)不法侵入によって被害者に生じる損害額は?

    他人の土地への不法侵入の場合、被害者に具体的な損害が発生するかどうかはケース・バイ・ケースです。

    侵入後、仮に数時間程度滞在したとしても、その場にいるだけで特に何もしなければ、被害者に損害は発生しないかもしれません。

    一方、何度も侵入を繰り返した結果、被害者が警戒して防犯設備を設置すれば、設置費用を損害と捉えることもできるでしょう。
    また、侵入の際に設備や建物を壊した場合には、修理費用が被害者の損害となります。

    このように、不法侵入によって被害者に生じる損害の金額は、具体的な事情に応じて個別に決まるため、一概に「いくらくらい」と言うことはできません。

4、住居侵入罪で逮捕された場合の対処法は?

他人の土地に侵入する現場を発見されたり、防犯カメラに侵入時の映像が映っていたりした場合、住居侵入罪で逮捕される可能性があります。

万が一住居侵入罪で逮捕されてしまったら、以下の対応をとりましょう。

  1. (1)罪を認めるかどうかの方針を決める

    刑事手続きへの対応方針は、「罪を認めて寛大な処分を求める」、もしくは「罪を認めずに無罪を主張する」の2通りに大別されます。

    罪を認める場合は、一貫して反省の態度を示しつつ、被害者との示談を試み、起訴猶予(不起訴)処分または執行猶予付き判決を目指すことになります。これに対して、罪を認めない場合には、取り調べに対しては黙秘を貫き、起訴後の公判手続きでも徹底的に犯罪事実を争う対応になるでしょう。

    このように、どちらの方針を選択するかによって、今後の対応が全く異なるため、まずは罪を認めるかどうかの方針を定めましょう。

  2. (2)被害者との示談を試みる

    罪を認める場合には、被害者との示談交渉へと早急に着手しましょう。被害者との示談が成立すれば、被疑者にとって良い情状として働き、起訴猶予(不起訴)処分が行われる可能性が高まります

    しかし、逮捕・勾留によって身柄を拘束されている状況では、被疑者が自ら示談交渉を行うことはできません。

    そのため、弁護士に示談交渉の代行を依頼することをおすすめします。また、弁護士を通じて家族などに連絡をとり、示談金を準備しておいてもらいましょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    住居侵入罪で逮捕されてしまった場合、刑事手続きからの早期解放を目指すためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。

    弁護士は、取り調べに臨む際の留意事項などについてアドバイスをし、被害者との示談交渉や家族の窓口として差し入れや連絡の伝達等を行います。また、身柄拘束により自由が奪われている状況でも、弁護士が接見を通じて親身にサポートし、被疑者の精神的な負担を軽減します

    万が一、他人の土地に勝手に入ったことを見とがめられ、住居侵入罪で逮捕されてしまった場合は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

他人の土地に勝手に入った場合、住居侵入罪によって逮捕・起訴され、刑事罰が科されるおそれがあります。侵入の態様が悪質な場合、懲役刑の前科が付いてしまう可能性があるので注意が必要です。

もし住居侵入罪で逮捕されてしまった場合、速やかにベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士へご相談ください。今後の対応方針を検討し、できる限り早期に刑事手続きから解放できるように尽力いたします。

また、逮捕されてご自身では動けない被疑者に代わって、被害者との示談交渉も弁護士が代行いたします。ご家族との窓口も弁護士が担当いたしますので、身柄拘束による過酷な状況下でも、幾分精神的に楽になるかと思います。

他人の土地へ勝手に入ったのが見つかり、住居侵入罪で刑事手続きにかけられてしまった方やそのご家族は、すぐにベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています