小売業者が知っておくべき法律とは? 顧問弁護士を検討すべきケース

2022年06月28日
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小売業者が知っておくべき法律とは? 顧問弁護士を検討すべきケース

鹿児島県内だけでも、小売事業者の数は1万7031あり、小売業に従事する方の人数は10万3319人にのぼります(鹿児島県平成26年商業統計表)。

小売業で事業を拡大し従業員数を増加させようと考えている経営者の方で、従業員の雇用に関する法律や、商品・販売方法・広告に関する法律など、法令順守に関して不安をお持ちの方は一定数いるかと思います。

本コラムでは、小売業を営む方を対象に、従業員との関係において留意すべき法律や、商品・販売方法・広告との関係において順守すべき法律などを、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

1、法律は知らなかったでは済まされない

小売業に限った話ではありませんが、「順守すべき法律を知らなかった」では済まされません。

会社は、会社法や労働基準法、また小売業であれば特定商取引法や景品表示法などによって、法令順守が義務化されています。法令順守は、事業の社会的評価・価値の維持・向上につながりますので、健全な会社経営にとって重要であるといえます。

以下では、従業員の雇用に関する法律、商品・販売方法・広告に関する法律に区別して、代表的な法律を紹介します。

2、従業員に関する法律

  1. (1)労働基準法をはじめとする労働法

    人を雇用するに当たっては、労働契約の締結にはじまり、就業規則の用意、労働保険・社会保険への加入、障害者の雇用など、労働基準法や労働契約法といった労働法によって、事業者の対応すべき事項が定められています。

    ここでは、それぞれの項目について、特に留意すべき点をお伝えします。

    労働契約 労働契約を結ぶときには、労働者に労働条件を明示することが必要
    ※以下の労働条件については書面を交付する必要がある
    • 労働契約の期間
    • 契約の更新があるかどうかなど
    • 就業する場所
    • 仕事の内容
    • 就業の時刻、残業の有無、休日休暇など
    • 賃金の決定、計算と支払いの方法など
    • 退職、解雇の事由
    就業規則 常時10人以上の労働者を雇用している事業者は、就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出ることが必要
    労働保険 雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込がある人を雇い入れた場合に適用対象となる
    ※雇用保険制度への加入は事業主の義務で、保険料は労働者と事業主の双方が負担
    社会保険 小売業の場合、法人化していなければ強制適用となるわけではない
    ※加入した場合の保険料は、事業主と労働者が折半で負担
    障害者の雇用義務 常時雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用する必要がある
  2. (2)労働組合への対応

    従業員の数が増えれば、事業所内で労働組合が結成される可能性があります。たとえ事業所内に労働組合が結成されなかったとしても、従業員が外部ユニオンに加入する可能性も考えられます。

    いずれの場合であっても、労働組合から労働条件などについて団体交渉の申し入れがあったときには、事業者は、正当な理由なくこれを拒むことができません。

    正当な理由なく団体交渉を拒んだ場合には、不当労働行為であるとして各都道府県の労働委員会に対して救済申し立てなどが行われ、これが認められれば労働委員会から救済命令の交付を受けることとなります。もちろん、いきなり裁判所に対して訴訟が提起されることもあり得ます。

    従業員を雇用するということは、従業員個々人との関係だけでなく、従業員集団である労働組合との関係でも、事業者としての責任が生じるということを理解する必要があります

3、商品・販売方法・広告に関する法律

  1. (1)製造物責任

    製造物責任とは、PL法とも呼ばれており、製造物の欠陥が原因で生命・身体・財産に損害が生じた場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。

    製造業者等とは、「製造物を業として製造・加工した者」や、「自ら製造業者として製造物に氏名等の表示をした者」などを意味するとされていますので、原則として、小売業者のような販売業者は、製造物責任法の対象ではありません。

    しかし、「自ら商品を輸入して販売する輸入業者」や、「製造物に製造業者と誤認させるような表示をした者」などは、実際に商品を製造していなくても、製造責任法の対象となります。

    したがって、輸入品やプライベートブランド商品の販売を予定している小売業の方は、メーカーとの交渉の場面などにおいて、製造物責任法の適用を受けるかどうかについての検討が必要です

    なお、プライベートブランド商品の製造をメーカーに委託し、自社オリジナルの商品として販売するような場合には、他者の特許や意匠などの知的財産権を侵害していないかについても検討する必要も生じます。

  2. (2)特定商取引法

    近年の小売業では、実店舗だけでなく、オンラインでのEC事業の展開を並行して行うことがスタンダートともいえます。EC事業は、店舗型と比較してコストや固定費を削減でき、直接の顧客対応も減少し、運営にかかる工数も軽減させることができます。

    その反面、対面での販売ではないため、EC事業に関しては、特に消費者を保護する必要があるとして、特定商取引法という法律によって特別の規制が課せられています

    ここでは、紙面の関係上、特定商取引法による規制の項目だけを紹介するにとどめますが、いずれも重要な規定ですので、詳細も確認のうえ、不明な点は弁護士に相談されることをお勧めします。

    【行政規制】
    • 広告表示
    • 誇大広告等の禁止
    • 未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
    • 未承諾者に対するファクシミリ広告の提供の禁止
    • 前払式通信販売の承諾等の通知
    • 契約解除に伴う債務不履行の禁止
    • 顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止
    • 業務改善指示、業務停止命令、業務禁止命令等の行政処分および罰則
    【民事ルール】
    • 契約の申し込みの撤回または契約の解除
    • 事業者の行為の差止請求
  3. (3)景品表示法

    景品表示法とは、事業者が商品の品質・内容・価格等を偽って表示を行うことを規制することなどによって、消費者を保護するための法律です。

    商品の表示に関する規制には、次のようなものがあります(EC事業の場合には特定商取引法による特別の規制がありますが、ここでは、EC事業以外の場合を想定して紹介します)。

    小売業という販売を行う業種にとって特に重要な規制であるといえ、違反すれば、是正を求める措置命令が発せられたり、課徴金の納付を命じられたりするおそれがありますので、十分に理解しておく必要があります

    ① 優良誤認表示(商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示)
    • 内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
    • 内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

    ② 有利誤認表示(商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示)
    • 取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
    • 取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

4、顧問弁護士がいるメリット

ここまで紹介した法律は、小売業を行う場合に適用される代表的な法律のごく一部に過ぎません。このほかにも数多くの法律の適用を受けることとなりますが、仮に法律を知らなくてもそれに違反した場合には、罰則を受けたり、メディアに報道されたりするなど、大きな不利益を被ることにもなりかねません。

そのような事態を回避するためにも、事業活動や事業規模の拡大をきっかけに、弁護士との顧問契約を検討されることをおすすめします。

顧問弁護士がいれば、継続的な関係にあり自社の内情を把握していますので、スムーズでスピーディーな対応を期待できますし、スポット的に弁護士に依頼するよりも総コストを抑えることも期待できます。

また、顧問弁護士をつけておけば、コンタクトが容易となりますので、契約書チェックや人事労務トラブルの相談など日常業務の小さなトラブルでも気軽に相談することができ、コンプライアンス順守が徹底され、社会的な信用が高まり、事業価値の向上につながるといえます。

ベリーベスト法律事務所では月額3980円から利用できるプラン「リーガルプロテクト 」をご用意しています。必要なサポートだけを受けられる効率的なプランで、コストが気になる場合も気軽に利用できます。まずはベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお問い合わせください。

5、まとめ

小売業を行うに当たっては、労働基準法をはじめとする労働法のほか、製造物責任法・特定商取引法・景品表示法などの法律の適用を受けます。

このほかにも数多くの法律の適用を受けますが、違反をすれば、法律を知らなかったでは済まされず、罰則を受けたり、メディアに報道されたりするおそれがあります。このようなリスクを回避し、事業の社会的信用・価値を高めるためにも、顧問弁護士をつけることがおすすめです。

小売業に関する法律でお悩みの際は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスまでお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています