景表法違反における課徴金制度とは|課徴金納付命令の対象となる行為

2022年08月23日
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景表法違反における課徴金制度とは|課徴金納付命令の対象となる行為

2021年度に鹿児島市消費生活センターと県大島消費生活相談所に寄せられた相談件数は4179件であり、前年度より329件減少しました。一方で、通信販売における購入トラブルは、前年度307件から337件と増加の傾向にあります。

通信販売のトラブルのひとつに、景品表示法(以下、景表法)に関するものがあります。景表法では、消費者を誤導しかねない商品・サービスの表示として、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」を禁止しています。

優良誤認表示または有利誤認表示を行った事業者は、消費者庁から措置命令や課徴金納付命令を受ける可能性があります。特に課徴金は非常に高額となる場合がありますので、各事業者は、景表法違反の不当表示が発生しないように、コンプライアンス体制の強化に努める必要があります。

今回は、景品表示法に違反した事業者に対して行われる課徴金納付命令の概要について、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「令和2年度 消費生活相談統計」(鹿児島市))

1、景表法における課徴金制度とは

景品表示法では、消費者庁に、商品・サービスに関する不当表示をした事業者に対して、「課徴金納付命令」を行う権限を認めています。

「課徴金」とは、法律違反を犯した事業者に対して課される行政上の制裁金です。課徴金は、罰金などの刑事罰とは異なりますが、高額になるケースも多く、事業者による違法行為のけん制として機能することが期待されています

2、景表法に基づく課徴金対象行為

景品表示法において課徴金納付命令の対象とされているのは、商品・サービスに関する不当表示である「優良誤認表示」と「有利誤認表示」です。

  1. (1)優良誤認表示

    「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質・規格その他の内容に関する、一般消費者に対して行われる以下の表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあるものを意味します(景品表示法第5条第1号)。

    • 実際の商品やサービスよりも著しく優良であると示す表示
    • 事実に相違して、競合他社の商品やサービスよりも著しく優良であると示す表示


    優良誤認表示の特徴は、商品・サービスの品質などに焦点を当てた表示である点です。
    実際の商品・サービスよりも、品質などにつき良い印象を不当に与える優良誤認表示は、課徴金納付命令の対象になります

  2. (2)有利誤認表示

    「有利誤認表示」とは、商品やサービスの価格その他の取引条件に関する、一般消費者に対して行われる以下の表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあるものを意味します(景品表示法第5条第2号)。

    • 実際の商品やサービスの取引条件よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
    • 競合他社の商品やサービスの取引条件よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示


    有利誤認表示の特徴は、商品・サービスの価格などに焦点を当てた表示である点です。
    実際よりも「お買い得」である印象を不当に与えて、一般消費者を誤導する有利誤認表示は、課徴金納付命令の対象となります。

3、景表法違反による課徴金の対象期間・計算方法

優良誤認表示または有利誤認表示を行った事業者は、景品表示法に基づく課徴金納付命令の対象になります。

課徴金額は、不当表示を行った期間や売上額などに応じて決まります。課徴金の対象期間・計算方法は以下のとおりです。

  1. (1)課徴金の対象期間

    優良誤認表示・有利誤認表示に対する課徴金の対象期間は、以下の要領によって決まります(景品表示法第8条第2項)。

    ① 原則
    不当表示を行った期間

    ② 不当表示を行った後、6か月以内(※)に取引を行った場合
    不当表示を行った期間+不当表示をやめた日から最後の取引をした日までの期間
    (※一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消する相当な方法により、不当表示に該当することを一般消費者に周知した場合には、周知を行った日まで(景品表示法施行規則第8条))

    ③ ①または②の期間が3年を超える場合
    当該期間の末日からさかのぼって3年間
  2. (2)課徴金の計算方法

    優良誤認表示・有利誤認表示に対する課徴金額は、原則として以下の計算式によって算出されます(景品表示法第8条第1項)。

    課徴金額=課徴金対象期間の売上額×3%


    ただし、以下の場合には課徴金納付命令が行われません。

    • ① 課徴金対象期間を通じて、事業者が不当表示に該当することを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を怠らなかった場合
    • ② 課徴金額が150万円未満の場合


    なお、後述のとおり、消費者庁長官に不当表示の事実を報告した場合、および返金措置を実施した場合には、課徴金の額が減額されます。

4、景表法違反で課徴金納付命令を受けそうになった場合の対処法

優良誤認表示または有利誤認表示の疑いで、消費者庁から課徴金納付命令を受けるおそれが生じた場合には、以下の対応によって事態の収拾を図る必要があります。

  1. (1)表示の合理的な根拠を示す資料を消費者庁に提出する

    優良誤認表示の疑いがある表示について、消費者庁は実際に課徴金納付命令を行う前に、事業者に対して、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める場合があります(景品表示法第7条第2項)。

    消費者庁から上記の要求を受けた事業者は、以下の要件を満たす資料を消費者庁に提出することが求められます。

    ① 以下の根拠によって客観的に実証された内容であること
    • 試験、調査によって得られた結果
    • 専門家、専門家団体、専門家機関の見解
    • 学術文献
    ② 表示された効果・性能と、提出資料によって実証された内容が適切に対応していること


    上記の要件を満たす資料が提出されない場合、優良誤認表示が行われたとみなされ、課徴金納付命令が行われてしまいます(不実証広告規制)

    そのため、消費者庁による優良誤認表示の指摘に反論する場合には、表示の実証的な根拠を示す資料を消費者庁に提出する必要があります。

  2. (2)不当表示の事実を認めて消費者庁に報告する

    優良誤認表示・有利誤認表示を行っていたことを、消費者庁長官に対して自主的に報告した場合、課徴金の額が2分の1に減額されます(景品表示法第9条)。

    消費者庁に不当表示が発覚して、高額の課徴金納付が命じられるリスクを考慮すると、自主申告を行った方が賢明です。

    なお、消費者庁長官に対する報告は、景品表示法施行規則様式第一に従って行う必要があります(同規則第9条)。

  3. (3)返金措置を実施する

    優良誤認表示または有利誤認表示を行ったことが判明した場合、一般消費者の信頼を回復するため、購入代金の返金措置を実施することも考えられます。

    返金措置を実施する場合、その計画(実施予定返金措置計画)を作成して消費者庁の認定を受ければ、返金額が課徴金の額から控除されます(景品表示法第10条、第11条)。

5、景表法の規制に関して、企業が気をつけるべきこと

景品表示法違反の優良誤認表示・有利誤認表示などが行われることを防ぐため、企業は以下のポイントに留意して、社内のコンプライアンス体制を強化することが大切です。

  1. (1)商品等表示のダブルチェック体制を整える

    現場担当者の判断だけで商品・サービスに関する表示内容を決めると、景品表示法に違反する表示を見逃してしまうおそれがあります。

    現場レベルでのチェックに加えて、法務・コンプライアンス担当者などによるダブルチェックを実施し、景品表示法違反の表示がリリースされることを未然に防ぐ必要があります

  2. (2)優良誤認表示・有利誤認表示についての社内理解を深める

    商品・サービスの表示業務に関与する従業員は、景品表示法の規制内容を熟知している必要があります。

    従業員の景品表示法規制に対する習熟度を高めるには、定期的に社内研修を実施することが効果的です。現場担当者・法務担当者などを対象として、従業員研修のプログラムに景品表示法に関する講義を組み込み、知識のブラッシュアップを図りましょう。

  3. (3)弁護士のリーガルチェックを受ける

    特に新商品・新サービスをリリースする際には、その表示に関して弁護士のリーガルチェックを受けることをおすすめします。

    弁護士は、景品表示法の規制内容を踏まえたうえで、違法になり得る商品・サービスの表示を見逃さずに指摘し、クライアント企業を課徴金などのリスクから守ります。景品表示法に関するリーガルチェックや、その他の企業法務に関するお悩みは、ぜひ弁護士にご相談ください。

6、まとめ

景品表示法に違反する優良誤認表示・有利誤認表示を行った事業者は、消費者庁から課徴金納付命令を受ける可能性があります。もし自社が優良誤認表示・有利誤認表示を行ったことが判明した場合には、消費者庁長官への報告や返金措置などを行い、事態の収拾を図る必要があります。

また、景品表示法違反の不当表示が行われないように、日頃から社内のコンプライアンス体制を強化することも大切です。

ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスでは、社内体制の整備・リーガルチェック・従業員研修などを通じて、クライアント企業のコンプライアンス強化をサポートいたします。

景品表示法に関する疑問点がある、または顧問弁護士をお探しの企業経営者・担当者は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています