法律上、トラックに脚立が必要になる? 会社が準備しておくべきこと
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2022年に鹿児島県内で発生した労働災害は4502件でした。そのうち、運輸交通業は207件、貨物取扱業では29件の死傷者が発生しています。
2023年(令和5年)10月と2024年(令和6年)2月には、改正労働安全衛生規則が順次施行され、より安全な職場環境づくりが求められます。2023年10月に施行された改正労働安全衛生規則では、2t以上のトラックにおける荷役作業を行う際に、脚立などの昇降設備を設けることが義務化されました。改正労働安全衛生規則への対応が済んでいない運送業者などは、速やかに対応を済ませましょう。
本記事では、トラックに脚立などの昇降設備を設けるべきケースなどにつき、改正労働安全衛生規則の内容を踏まえてベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。
出典:「業種別労働災害発生状況」(鹿児島労働局)
1、【2023年10月・2024年2月施行】労働安全衛生規則改正の概要
2023年10月1日と2024年2月1日に、改正労働安全衛生規則が順次施行されます。
2023年10月1日には、トラックなどの貨物自動車について、昇降設備・保護帽の設置義務の範囲が拡大されました。また2024年2月には、テールゲートリフターの操作に関する特別教育が義務化されます。以下、詳細を解説していきます。
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(1)2023年10月施行|昇降設備の設置義務の範囲拡大
事業者は、最大積載量が一定以上の貨物自動車について、墜落による労働者の危険を防止するため、床面と荷台との間、および床面と荷台上の荷の上面との間を安全に昇降するための設備を設けなければなりません(労働安全衛生規則第151条の67第1項)。
また、当該貨物自動車において荷積みおよび荷卸しの作業に従事する労働者は、昇降時に当該昇降設備を使用しなければなりません(同条第2項)。
従来の労働安全衛生規則では、昇降設備の設置義務の対象となるのは、最大積載量が5t以上の貨物自動車に限られていました。2023年10月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、昇降設備の設置義務が課される貨物自動車の最大積載量が2t以上に拡大されました。 -
(2)2023年10月施行|保護帽の着用義務の範囲拡大
事業者は、一定の要件を満たす貨物自動車において、荷積みおよび荷卸しの作業に従事する労働者に保護帽を着用させなければならず、当該労働者は保護帽を着用しなければなりません(同規則第151条の74第1項、第2項)。
従来の労働安全衛生規則では、保護帽の着用義務の対象となるのは、最大積載量が5t以上の貨物自動車に限られていました。
2023年10月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、最大積載量が5t以上の貨物自動車に加えて、以下のいずれかに該当する貨物自動車についても、新たに荷積みおよび荷卸し作業時における保護帽の着用が義務化されました。- ① 最大積載量が2t以上5t未満であって、荷台の側面が構造上開放されているものまたは構造上開閉できるもの
- ② ①に該当するものを除き、最大積載量が2t以上5t未満であって、テールゲートリフターが設置されているもの(保護帽を着用する義務があるのは、テールゲートリフターを使用するときのみ)
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(3)2024年2月施行|テールゲートリフターの操作に関する特別教育の義務化
2023年2月1日に施行される改正労働安全衛生規則では、テールゲートリフターの操作を行う労働者に対して、特別教育を行うことが事業主に義務付けられます(労働安全衛生法第59条第3項、改正労働安全衛生規則第36条第5号の4)。
テールゲートリフターの操作に関する特別教育は、以下の科目・時間について実施しなければなりません。① 学科教育
(a)テールゲートリフターに関する知識(1.5時間)
(b)テールゲートリフターによる作業に関する知識(2時間)
(c)関係法令(0.5時間)
② 実技教育
(d)テールゲートリフターの操作の方法(2時間)
事業者がテールゲートリフターの操作に関する特別教育を行ったときは、受講者・科目等の記録を作成して、3年間保存する必要があります(同規則第38条)。
なお、上記の科目の全部または一部について十分な知識および技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができます(同規則第37条)。
2、トラックに設置すべき昇降用設備|脚立など
改正労働安全衛生規則に基づき、最大積載量が2t以上の貨物自動車(トラックなど)には、荷積みおよび荷卸しの作業用に昇降設備を設置しなければなりません。
トラックに設置すべき昇降設備としては、以下の例が挙げられます。
- はしご
- 脚立
- 昇降タラップ
- 作業台などの移動式足場
- テールゲートリフター(中間位置で停止させてステップとして使用する)
3、2t以上のトラックでは、保護帽(ヘルメット)の着用も必要な場合あり
トラックにおける荷積みおよび荷卸し作業時の保護帽(ヘルメット)着用は、従来は5t以上のトラックについてのみ義務付けられていました。
しかし労働安全衛生規則の改正により、荷台の側面が構造上開放されており、または構造上開閉できる場合、およびテールゲートリフターを使用する場合には、2t以上5t未満のトラックにおいても荷積みおよび荷卸し作業時の保護帽着用が義務化されました。
保護帽としては、型式検定に合格した「墜落時保護用」のものを使用する必要があります。2t以上5t未満のトラックで、保護帽の着用義務の対象であるものを運用する事業者は、すぐに保護帽を調達して備え付けましょう。
4、労働安全衛生規則に違反した場合のペナルティ
昇降設備(脚立など)の設置や保護帽の着用などに関して、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に違反した事業者は、以下の法律上のペナルティを受けるおそれがあります。
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(1)行政処分|作業停止命令など
労働安全衛生法に違反する事実がある場合、都道府県労働局長または労働基準監督署長は、事業者に対して作業の全部または一部の停止など、労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができます(労働安全衛生法第98条第1項)。
作業停止命令を受けると、事業場における操業を停止して是正策を講じなければならないため、コストの増大と収入の減少に繫がってしまいます。 -
(2)刑事罰
労働安全衛生法に違反する行為の一部は、刑事罰の対象となります。
たとえば、事業者は労働者の作業行動から生じる労働災害を防止するため、必要な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法第24条)。昇降設備の不設置や保護帽を着用させないことは、労働災害の防止措置義務違反に当たる可能性があります。
労働災害の防止措置を怠った者は、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(同法第119条第1号)。さらに、法人の代表者・代理人・使用人そのほかの従業者が労働災害の防止措置を怠った場合は、法人にも「50万円以下の罰金」が科されます(同法第122条)。 -
(3)安全配慮義務違反に基づく損害賠償
事業者が労働安全衛生法に基づく措置等を怠った結果、労働者が事故に遭ってケガをし、または死亡した場合は、事業者が労働者に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
特に労働者に重篤な障害が残った場合や、労働者が死亡した場合には、事業者は多額の損害賠償責任を負う可能性が高いので要注意です。労災による損害賠償のリスクを回避するためにも、事業者は労働安全衛生法の順守を徹底しましょう。
5、法改正対応について不安があれば弁護士に相談を
労働安全衛生法や労働安全衛生規則を含めて、企業はさまざまな法改正に対応しなければなりません。
自社に適用される法令の改正について、タイムリーに漏れなく情報収集を行うことは非常に大変です。顧問弁護士と契約すれば、法改正に関する最新情報を収集することができます。
また、法改正に対して実際にどのような対応をすべきであるかは、事業内容や会社の状況によって異なります。顧問弁護士と契約していれば、自社の状況に合わせた法改正への対応策につき、具体的な提案を受けられます。
ベリーベスト法律事務所では、月額3980円からの顧問弁護士サービスをご用意しています。法改正対応について不安がある企業や、最新の法令への対応を漏れなく行いたいとお考えの際は、お気軽にご相談ください。
6、まとめ
労働安全衛生規則の改正により、2t以上のトラックにおける荷役作業時には、脚立などの昇降設備を設置することが義務付けられました。従来は5t以上のトラックに限られていたことに比べると、昇降設備の設置義務の範囲が拡大した点に注意が必要です。
そのほか、荷役作業時における保護帽の着用義務も、従来は5t以上のトラックに限って適用されていましたが、今回の改正によって2t以上5t未満のトラックの一部にも適用が拡大されています。
法改正対応を漏れなく行うためには、弁護士と顧問契約を締結することをおすすめします。最新の法改正情報を収集できるほか、具体的な対応策についてもアドバイスを受けられます。
ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスは、法改正対応に関するご相談を随時受け付けております。お客さまのニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスもご用意しておりますので、法改正対応についてお悩みの企業は、お気軽にベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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