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イラストや画像のトレスは違法? 企業が対策すべき著作権侵害

2022年09月29日
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イラストや画像のトレスは違法? 企業が対策すべき著作権侵害

イラストなどの画像には、著作権が発生するため、他人の著作物を勝手に利用することは、著作権侵害に当たり違法です。

特に最近では、インターネット上のイラストを無断でトレス(トレース)して、別の画像を制作するタイプの著作権侵害が散見されます。

著作権侵害を犯した場合、差止請求や損害賠償請求、さらには刑事罰の対象になるためご注意ください。また、企業としては、自社が著作権侵害の責任を追及されないように、日頃から対策を講じておくことが大切です。

今回は、個人はもちろん、会社や企業が知っておきたい、イラストなどの画像に関する著作権法のルールや、イラストの著作権侵害が問題となった裁判例などについて、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

1、イラストなどの画像には著作権が発生する

イラストなどの画像は著作物であるため、著作権が発生します。他人の著作物を無断で利用することは、原則として著作権侵害に該当する違法行為です。

  1. (1)著作権とは

    著作権とは、著作物を独占的に利用する権利をいいます。著作権者は、著作物の利用を第三者に許諾することで、使用料収入を得ることができます。

    このように、著作物の創作について経済的メリットを与えて、社会全体における創作活動を促すことが、著作権を認めることの主な目的です。

  2. (2)著作権の種類・内容

    著作権法上、著作権は以下の各権利に細分化されています。各権利によって保護されている行為をするためには、著作権者の許諾を得なければなりません

    ① 複製権
    著作物のコピーを作成する権利です(著作権法第21条)。

    ② 上演権・演奏権
    著作物を公に上演し、または演奏する権利です(著作権法第22条)。

    ③ 上映権
    著作物を公に上映する権利です(著作権法第22条の2)。

    ④ 公衆送信権
    著作物を公に向けて送信する権利です(著作権法第23条)。インターネット上に著作物をアップロードする行為などは、公衆送信権によって保護されます。

    ⑤ 口述権
    言語の著作物を公に口述する権利です(著作権法第24条)。

    ⑥ 展示権
    美術の著作物または未発行の写真の著作物をオリジナル(原作品)により、公に展示する権利です(著作権法第25条)。

    ⑦ 頒布権
    映画の著作物を、配給フィルム・BD・DVDなどの複製物によって頒布する権利です(著作権法第26条)。

    ⑧ 譲渡権
    オリジナルまたは複製物の販売により、著作物(映画の著作物を除く)を公衆に提供する権利です(著作権法第26条の2)。

    ⑨ 貸与権
    複製物のレンタルにより、著作物(映画の著作物を除く)を公衆に提供する権利です(著作権法第26条の3)。

    ⑩ 翻訳権・翻案権
    著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化し、または著作物を用いて新たな著作物を創作する(翻案する)権利です(著作権法第27条)。

2、イラストなどの画像をトレス(トレース)することの違法性

「トレス(トレース)」とは、既存のイラストなどの画像をなぞって写し取ることを意味します。画像を見ながら同じように描く「模写」とは異なり、画像を下敷きにしてなぞる形で描くのが「トレス」です。

イラストなどの画像を、著作権者に無断でトレスして公開した場合、著作権侵害に該当するのでご注意ください。

  1. (1)トレスは著作権侵害に該当し得る

    オリジナルの画像をそのまま写し取るトレスは、「複製権」や「公衆送信権」の侵害に該当する可能性があります。

    練習のためにトレスを行うなど、個人的または家庭内に限って使用する場合には、私的使用として複製権侵害に該当しません(著作権法第30条第1項)。

    しかし、トレスによって描いた画像を著作権者に無断でインターネット上にアップした場合は、複製権・公衆送信権の侵害に該当するので注意が必要です

    また、トレスによって描いたものにアレンジを加えて作成した画像を、インターネット上に無断でアップした場合には「翻案権」の侵害に該当する可能性があります。翻案権侵害に該当するのは、その画像を見た際に、オリジナル画像の本質的な特徴を直接感得できる場合です。

  2. (2)企業が著作権侵害を犯した場合のリスクとペナルティ

    企業が著作権侵害を犯した場合、その事実がSNSなどで拡散されて企業イメージが低下し、売上・収益が減少するリスクがあります。

    また、著作権者から差止請求(著作権法第112条)や損害賠償請求(民法第709条)を受ける可能性もあります。差止請求を受ければ出荷済みの商品の回収等を強いられ、損害賠償請求を受ければ多額の損失を計上することになりかねないので要注意です。

    さらに、故意による著作権侵害は刑事罰の対象であり、侵害者には「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」が科され、またはこれらが併科されます(著作権法第119条第1項)。

    会社の役員や使用人その他の従業者などが著作権侵害を犯した場合、会社にも「3億円以下の罰金」が科される点にご注意ください(同法第124条第1項第1号)

3、イラストの著作権に関する裁判例

実際に、企業が著作権侵害を理由に訴えられた裁判例を2つ紹介します。

  1. (1)親子パンダイラスト著作権侵害事件

    東京地裁平成31年3月13日判決の事案では、著作権を有するパンダのイラストを無断で商品パッケージに使用したとして、原告が加工食品の製造・販売業を営む被告会社を訴えました。

    東京地裁は、商品パッケージに掲載された画像とオリジナル画像は、いずれも大小2頭のパンダを描いていることや、パンダの姿勢・表情・大きさの比などを含めた構成が類似している点を指摘しました。

    そのうえで、両画像の表現上の本質的な特徴が同一であるとして、被告会社による複製権侵害・譲渡権侵害などを認め、総額32万3260円(弁護士費用を含む)の損害賠償を命じました。

  2. (2)猫イラスト著作権侵害事件

    大阪地裁平成31年4月18日判決の事案では、著作権を有する猫のイラストを無断でTシャツ等に印刷して販売したとして、原告が繊維製品等を販売する被告会社を訴えました。

    被告会社がTシャツ等に印刷した猫のイラストには、原告の著作物である猫のイラストとの間に大なり小なりの違いがありました。

    しかし大阪地裁は、Tシャツ等に印刷した20点のイラストのうち、12点についてはオリジナルとの差が重要ではなく、表現上の本質的特徴が同一であると判断し、複製権侵害を認定しました。また、残り8点のうち4点については、オリジナルの表現上の本質的な特徴を維持しつつ、その一部を変更したものであるとして翻案権侵害を認定しました。

    最終的に大阪地裁は、被告会社に対して総額167万3570円(弁護士費用を含む)の損害賠償を命じました。

4、会社が知っておくべき著作権侵害の予防法

著作権侵害を犯してしまうと、会社の社会的評判が失墜することに加えて、差止請求・損害賠償請求・刑事罰により甚大な損失を被ってしまいます。

このような事態を避けるため、会社としては、事前に以下の予防策を講じておきましょう。

  1. (1)著作権法のルールについて理解を深める|社内研修が効果的

    著作権侵害を犯さないためには、会社に所属する従業員全員が、著作権法のルールについて理解を深めることが非常に大切です。

    定期的に社内研修を実施するなどして、著作権に関する従業員の意識と理解の向上を図りましょう。

  2. (2)外注先に対して著作権侵害を犯さないように注意喚起する

    イラストなどの制作を外部委託する場合には、外注先による著作権侵害にも注意しなければなりません。

    外注先に責任がある場合でも、著作権侵害に該当することを見過ごしてイラストなどを公表してしまうと、著作権者から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります

    外注先に対しては、著作権侵害を犯さないように十分注意喚起を行ったうえで、社内でも著作権侵害に該当しないかどうか確認を行うべきでしょう。

  3. (3)著作権侵害についてダブルチェック体制を整える

    社内における著作権侵害の見落としを防ぐには、ダブルチェック体制を整えることも効果的です。

    制作担当者だけでなく、たとえば法務・コンプライアンスなどのバックオフィス担当者も確認作業に加わり、著作権侵害に当たるコンテンツがリリースされてしまうことを未然に防ぎましょう。

  4. (4)弁護士のアドバイスを受ける

    自社で制作したコンテンツが他社のコンテンツに類似していると思われる場合、リリースの前に弁護士のチェックを受けることをお勧めいたします。

    弁護士は、著作権法のルールや判例法理などを踏まえて、著作権侵害に当たると判断される可能性や、会社にとってのリスクの内容などについて、状況に合わせたアドバイスを行います。

    弁護士への相談により、コンテンツをリリースするかどうかなどにつき、会社として適切に判断することが可能となるでしょう

5、まとめ

イラストなどの画像には著作権が認められ、著作権者に無断で複製・アップロード・パロディ化などを行うと著作権侵害に該当します。企業としては、自社が著作権侵害を犯さないように、必要に応じて弁護士のアドバイスを受けつつ、適切な予防策を講じることが大切です。

ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスでは、著作権に関する法律相談を随時受け付けております。他社から著作権侵害のクレームを受けた場合や、著作権侵害の予防対策を講じたい場合には、お早めに当事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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