半休の場合における残業代の考え方|半休制度運用時のポイントも解説

2024年09月30日
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半休の場合における残業代の考え方|半休制度運用時のポイントも解説

半休を取得した労働者(従業員)がその日に残業をした場合、残業代の計算について複雑な部分が生じます。意図せず残業代不払いにならないよう、必要に応じて弁護士に相談しながら、正確に残業代を計算しましょう。

本記事では、半休後に残業した労働者に支払うべき残業代の計算方法や、半休制度を運用する際の注意点などをベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

1、半休取得時の残業時間の考え方

労働者が半休を取得した後に残業をした場合に、支払うべき残業代の金額を正確に計算するためには、まず半休と残業時間に関する基本的なルールを確認しましょう。

  1. (1)半休とは|無給の場合・有給の場合

    「半休」とは、所定労働時間のうちおおむね半分について、使用者が労働者の労働義務を免除した日のことです

    半休の取得単位は、会社によって異なります。

    たとえば、

    • 午前、午後で区切る場合(=午前休・午後休)
    • 所定労働時間の2分の1で区切る場合(例:所定労働時間が9時~12時、13時~18時の場合、9時出勤14時退勤または14時出勤18時退勤)

    などがあります。

    半休は原則として無給ですが、年次有給休暇として取得する場合は有給です。また、就業規則等の定めによって半休が有給とされることもあります。

    半休が無給の場合は、休んだ時間数に対応する賃金を控除します。これに対して、年次有給休暇として取得する半休に対しては、原則として所定労働時間働いたものとみなして賃金が支払われます(労働基準法第39条第9項)。

    就業規則等の定めによって半休が有給とされている場合は、支払われる賃金の額もその定めに従います。

  2. (2)法定内残業と時間外労働|半休後の残業は実労働時間で区別する

    労働者による残業は、「法定内残業」と「時間外労働」の2種類に分類されます。

    1. ① 法定内残業
      法定労働時間(※)の範囲内で行われる残業です。残業代として通常の賃金を支払えば足ります。
      ※法定労働時間:原則として1日当たり8時間、1週間当たり40時間(労働基準法第32条)

    2. ② 時間外労働
      法定労働時間を超えて行われる残業です。時間外労働手当として、通常の賃金に対して125%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条第1項)。

      また、1か月当たり60時間を超える時間外労働については、超過部分につき、通常の賃金に対して150%以上の割増賃金を支払う必要があります。


    労働者が半休を取得した日については、通常の労働日に比べて実労働時間が少なくなります。法定内残業と時間外労働は実労働時間で区別されるため、その日の実労働時間が法定労働時間に達しない限りは、法定内残業として通常の賃金を支払えば足ります。

2、半休取得時の残業代の計算方法|パターン別に紹介

半休取得後に残業をした労働者に対して支払うべき残業代の計算方法を、以下の3つのパターンに分けて解説します。



  1. (1)半休後に法定内残業をした場合

    <設例1>
    • 1時間当たりの基礎賃金:2500円
    • 所定労働時間:8時間
    • 有給休暇として半休(4時間)を取得した後、4時間労働し、さらに3時間残業をした


    残業代は、以下の式によって計算します。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間数

    1時間当たりの基礎賃金
    =1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    <総賃金から除外される手当>
    • 時間外労働手当、休日手当、深夜手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金


    設例1では、半休を取得した日の実労働時間は7時間なので、法定労働時間の範囲内です。よって、3時間の残業はすべて法定内残業であり、割増賃金率は適用されません。

    したがって、残業代の金額は7500円(=2500円×3時間)となります。

  2. (2)半休後に法定内残業と時間外労働をした場合

    <設例2>
    • 1時間当たりの基礎賃金:2500円
    • 所定労働時間:8時間
    • 有給休暇として半休(4時間)を取得した後、4時間労働し、さらに5時間残業をした


    設例2では、半休を取得した日の実労働時間は9時間なので、法定労働時間(8時間)を超えています。

    5時間の残業のうち、法定労働時間の範囲内である4時間は法定内残業、法定労働時間を超える1時間は時間外労働です。法定内残業に対しては通常の賃金、時間外労働に対しては125%以上の割増賃金を支払う必要があります。

    したがって、残業代の金額は1万3125円(=2500円×4時間+2500円×125%×1時間)です。

  3. (3)半休後の残業が深夜におよんだ場合

    <設例3>
    • 1時間当たりの基礎賃金:2500円
    • 所定労働時間:8時間
    • 有給休暇として半休(4時間)を取得した後、4時間労働し、さらに6時間残業をした
    • 残業のうち最後の1時間は、深夜(午後10時から午前5時まで)に行われた


    設例3では、半休を取得した日の実労働時間は10時間なので、法定労働時間(8時間)を超えています。

    6時間の残業のうち、法定労働時間の範囲内である4時間は法定内残業、法定労働時間を超える2時間は時間外労働です。また、時間外労働のうち1時間は深夜労働でもあります。
    法定内残業に対しては通常の賃金、時間外労働に対しては125%以上の割増賃金、時間外労働かつ深夜労働である労働に対しては150%以上の割増賃金を支払う必要があります。

    したがって、残業代の金額は1万6875円(=2500円×4時間+2500円×125%×1時間+2500円×150%×1時間)です。

3、半休制度を運用する際に注意すべきポイント

企業において半休制度を導入・運用する際には、以下の各点に注意しましょう。



  1. (1)半休取得のルールを明確に定める

    半休の取得については、以下の事項を就業規則などによって明確に定めておきましょう。

    • 「半日」の取り扱い(午前と午後で区別する、所定労働時間の2分の1とするなど)
    • 半休を取得できる労働者の範囲
    • 半休を取得できる回数(1年間に○回までなど)
    • 半休取得の届出方法(連絡方法、届出先、届出期日など)


    半休取得のルールに不明確な点があると、労働者とのトラブルが生じるおそれがあるので注意が必要です

  2. (2)時間休の導入には労使協定の締結が必要|半休とは異なる

    労働基準法に基づく年次有給休暇は、労働者が希望すれば半日単位で付与できます(平成7年7月27日基監発33号)。この場合、就業規則において年次有給休暇の取得に関するルールを定めておけば、特にその他の定めは必要ありません。

    これに対して、年次有給休暇を時間単位で付与する場合(いわゆる「時間休」を導入する場合)には、労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結する必要があります(労働基準法第39条第4項)。

    半休と時間休では、労働基準法上の取り扱いが異なる点にご注意ください。

  3. (3)残業代を正確に計算する

    労働者が半休後に残業をした場合には、残業代の計算方法が通常よりも複雑になることがあります。

    残業代を正しく計算しなければ、後に労働者から未払い残業代の請求を受け、トラブルに発展するリスクがあります。労働基準法の規定に従い、残業代を正しく計算しましょう。
    残業代の計算方法について迷う部分があれば、弁護士への相談をおすすめします。

4、人事労務に関することは弁護士に相談を

企業が人事労務管理を適切に行うことは、労働者の健康やモチベーションを維持しつつ、労働者とのトラブルを避ける観点から非常に重要です。

労働基準法をはじめとして、企業が順守すべき労働法のルールは多岐にわたります。適切に人事労務管理を行うためには、弁護士のサポートが欠かせません。

顧問弁護士と契約すれば、人事労務管理に関する悩みをスムーズに相談できます。その他にも、契約書の作成・チェックや業規制への対応など、幅広い事柄を顧問弁護士に相談可能です。

人事労務その他の事業運営に関することにお悩みの企業は、弁護士にご相談ください。

5、まとめ

半休を取得した労働者がその日に残業した場合、実労働時間に応じて法定内残業と時間外労働を区分して残業代を計算します。

残業代計算の方法が誤っていると、労働者から未払い残業代の請求を受けることになりかねません。労働者とのトラブルを防ぐため、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします

ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスは、人事労務管理に関するご相談を随時受け付けております。残業代の計算方法をはじめとして、人事労務管理に関する取り扱いにお悩みの企業は、お気軽にベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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