自己破産で土地は処分される? 残せるケースや残すための対処法を解説

2022年11月30日
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自己破産で土地は処分される? 残せるケースや残すための対処法を解説

2021年度に鹿児島市の消費生活センターに寄せられた相談は3799件で、そのうち多重債務による相談は86件でした。

自己破産は多重債務に対する有効な手段ですが、所有する土地は失ってしまう可能性が高くなります。土地を残しつつ債務の負担を軽減したい場合は、自己破産以外の債務整理や任意売却などの方法をご検討ください。

今回は、自己破産をした際に所有している土地の取り扱いについて、ベリーベスト法律事務所 鹿児島オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和3年度の消費生活相談統計」(鹿児島市)

1、自己破産をすると、所有する土地は失う可能性が高い

自己破産をした場合、生活に必要な最低限の財産を除いて、債務者(破産者)が所有する財産は処分されてしまいます。土地についても例外ではなく、自己破産をすると処分されてしまう可能性が高いです。

  1. (1)土地のローンが残っている場合|債権者により抵当権が実行される

    土地を購入する際に住宅ローンその他の不動産ローンを組み、残高がまだある場合は、土地に債権者の抵当権が設定されるのが一般的です。

    自己破産手続きにおいては、土地の抵当権は「別除権」に該当し、破産手続きによらないで行使できるとされています(破産法第65条第1項)。
    したがって債権者は、抵当権に基づく担保不動産競売(民事執行法第180条第1号)を裁判所に申し立て、競売代金から債権を回収できます。

    したがいまして、ローンが残っている土地については、自己破産をすると抵当権が実行され、手元に残しておくことはできない可能性が高いでしょう。なお、土地のローンは完済済みであっても、別の債権者のために土地へ担保権が設定されている場合は同様です。

  2. (2)土地のローンが残っていない場合|破産管財人により処分される

    ローンが残っておらず、担保権が設定されていない土地については、自己破産を申し立てると破産財団に含まれることになります。

    破産財団とは、破産者の財産を換価したうえで債権者へ配当される財産の総体のことをいいます。

    破産手続開始の決定がなされて以降、破産財団の管理処分権限は破産管財人に専属します(破産法第78条第1項)。
    破産管財人は、裁判所の許可を得たうえで、破産財団に属する土地を任意売却し、債権者への配当に充てることができます(同条第2項)。

    したがいまして、土地のローンが残っていない場合でも、自己破産をすると破産管財人によって処分されてしまう可能性が高いです

  3. (3)土地が共有の場合はどうなる?

    債務者が他の人と土地を共有している場合、破産手続きによる処分の対象となるのは、債務者が有する共有持分のみです。

    ただし、共有持分のみでは売却が困難と破産管財人が判断した場合は、共有者に対して「共有物分割請求」を行う可能性があります(民法第256条第1項)。共有者間で分割禁止の合意がなされていない限り、共有物分割請求を拒否することはできません。

    破産管財人が共有物分割請求を行った場合、以下のいずれかの方法によって土地が分割されてしまうので注意が必要です。

    ① 現物分割
    土地を分筆したうえで、分筆後の土地を共有者と破産管財人がそれぞれ取得します。

    ② 代償分割
    共有者または破産管財人の一方が土地を取得し、他方に対して代償金を支払います。

    ③ 換価分割
    土地を売却したうえで、代金を共有者と破産管財人の間で分けます。

2、自己破産をしても土地を残せるケース

多くのケースでは、自己破産をすると債務者の土地は処分されてしまいます。
しかし例外的に、以下の場合には土地を債務者の下に残して置ける可能性があります。

  1. (1)土地の価値がほとんどない場合

    土地の価値が非常に低く、買い手が付く見込みがない場合には、破産管財人が裁判所の許可を得て、土地を破産財団から放棄することがあります(破産法第78条第2項第12号)。
    換価・処分できないのであれば、債権者への配当原資となる破産財団に含めておく必要はないからです。

    土地が破産財団から放棄された場合、その土地は債務者の下へ返されるため、処分せずに残しておくことができます。

  2. (2)土地が債務者の所有物ではない場合

    破産手続による換価・処分の対象となるのは、債務者が所有する財産のみです。したがって、土地が債務者の所有物でない場合には、破産手続による換価・処分の対象になりません。

    たとえば、実際に土地を使用しているのは債務者であるものの、他の人から賃借権または使用借権の設定を受けているにすぎない場合には、引き続きその土地を使用することができます。

3、債務整理後も土地を残したい場合の対処法

債務整理後も、所有する土地を手元に残しておきたい場合には、自己破産以外の債務整理を検討することが第一の選択肢です。

どうしても自己破産が避けられない場合には、親族への売却やリースバックなども選択肢になり得ますが、多くの注意点があることにご留意ください。

  1. (1)自己破産以外の債務整理を検討する

    債務整理手続には、自己破産以外にも「個人再生」と「任意整理」があります。個人再生や任意整理を行えば、債務の減額後も土地を処分されることなく、手元に残しておける可能性があります。

    個人再生は、債権者が決議して裁判所が認可する「再生計画」に従い、元本を含めた債務を減額する手続きです。担保権が設定されたものを除き、債務者の財産が処分されることはありません。

    したがって、土地に抵当権などの担保権が設定されていないケースでは、個人再生を選択すれば土地を手元に残しておくことができるでしょう

    任意整理は、債権者と直接交渉を行い、主に利息と遅延損害金のカットを認めてもらう手続です。債務者の財産は処分されないので、任意整理を行えば、土地の処分を回避することができます

    各債務整理手続には、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。選択すべき債務整理手続は、債務者の状況によって異なるため、弁護士のアドバイスを受けることがおすすめです。

  2. (2)親族などに買い取ってもらう

    自己破産がやむを得ないものの、土地をこれまでどおり使い続けたい場合には、所有者を債務者から別の人へ変更する方法が考えられます。土地の所有者を変更するには、親族などに土地を買い取ってもらうのがひとつの方法です。ただし、債権者を害することを知りながら土地を不当に安い価格で売却した場合、破産管財人によって売却が否認される可能性があります(破産法第160条)。

    売却価格が適正であっても、代金を使ってしまった場合には、同様に売却が否認の対象となります(同法第161条)。さらに免責不許可事由に該当して、破産免責が認められなくなる可能性がある点にも要注意です(同法第252条第1項第1号、第4号)。

    また、土地の売主である債務者の側では、売却時に譲渡所得税が課税されることがあります。買主の側でも、無償または安価で土地を譲り受けた場合には、贈与税が課税されることがあるので十分ご注意ください。

  3. (3)業者へ売却してリースバックを受ける

    土地の所有者を変更する方法としては、不動産業者に対して土地を売却したうえで、リースバックを受けることも考えられます。

    リースバックとは、元々自分が持っていた不動産を他人に売却した後、同じ不動産を借りて使い続けることを意味します。売却・賃貸借の一連の取引を総称して「セール&リースバック」と呼ぶこともあります。

    セール&リースバックを行えば、債務者は売却代金を得たうえで、土地を使い続けることができます。売却代金を債務の返済に充てれば、自己破産を回避できるかもしれません。仮に土地の価値が低く、売却代金をほとんど得られなくても、自己破産によって慣れ親しんだ土地から離れなければならない事態を回避できます。

    ただし、親族に売却するケースと同様に、債権者を害することを知りながら土地を不当に安い価格で売却した場合や売却代金を使い込んでしまった場合は、破産管財人による否認や免責不許可事由の対象となるため注意が必要です(破産法第160条、第161条、第252条第1項第1号、第4号)。

    また破産管財人には、債務者が締結している土地賃貸借契約を解除する権限が与えられています(同法第53条第1項)。

    土地を居住用に用いている場合、破産管財人は解除権を行使せず、賃貸借契約が維持されるケースが大半です

    これに対して、土地が活用されていない場合などには、破産管財人によって土地賃貸借契約を解除されてしまう可能性が高いのでご注意ください。

4、自己破産する前に、土地の任意売却を検討すべき

土地にある程度の価値が認められる場合には、自己破産をする前に土地の任意売却を検討すべきです。

「任意売却」とは、自分で探してきた買主に対して不動産を売却することをいいます。
不動産業者との間のセール&リースバックは、任意売却の一形態です。

任意売却では、競売よりも高額で売買が成立しやすいメリットがあります。まとまった売却代金を得ることができれば、自己破産などの債務整理を回避し、手続にかかる期間や費用を節約できるかもしれません。

土地の任意売却については、弁護士が不動産業者と連携してサポートいたしますので、お早めにご相談ください

5、まとめ

自己破産をすると、価値が低く売却が困難な場合などを除き、債務者が所有する土地は処分されてしまいます。土地を手放すことを避けたい場合は、他の債務整理手続や任意売却を行うことが有力な選択肢です。

ベリーベスト法律事務所は、債務整理に関するご相談を随時受け付けております。借金の返済負担が重くお困りの方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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